第21話 7月17日雨

 もうすぐ選挙だなと思いつつ俺は無関心だった。

インフレが加速し生活が苦しいのに政治家はなにもしてくれない。与党のみならず既存の野党も頼りにならない。自分たちの不満や不安を受け止めてくれる政党や政治家に託したい。そう思う人は多くいるのだろうが、俺は連休明けの日経平均株価だけが気がかりだった。

 

 先日見たYouTube動画で、北欧の幸福度の高い国ついて興味深いデータが紹介されていた。なんと国民の投票率が80%を超えていたのだ。日本では40~50%程度だろうか。それに比べると驚異的といえる数字だ。

 自分のことを棚に上げて日本人の政治への無関心を嘆いた。ちなみに俺は選挙には必ず行く。ただ支持政党の議席は増えることはまれで、姉にいわせれば俺は票を無駄にしているそうだ。

 

 実のところ俺は政治にまったく期待を寄せていない。社会の不公正や差別に対し思うことはあるし愚痴もいう。ただ自分が不幸だと思うことは少ないし社会正義の実現は後の世代のためのものだと割り切っている。

 いまの自分が抱えている不満や不安を政治が解決してくれることは無い。そう納得するまで時間はかかったが知ってはいたと思う。ただ自己責任論がやたらと横行していたときは反発した。政治家がそれいいだしたらアンタらは何のためにいるの?と存在意義あるの?と頭にきたことを覚えている。

 要するに金もらってるんだから働けや。自己責任いうなら、まずはてめえの責任果たせよというのが俺の意見だった。ただあまり周囲から共感は得られなかった。当時俺がそれを口にしたときの反応といえば無視か黙殺だった。匿名掲示板ではそれはまだマシな方で、とんでもない反発を食らって攻撃された。


 俺はナショナリズムもポピュリズムも嫌いだ。トランプ大統領のせいではない。彼が登場する前から嫌いだったと思う。その思想自体よりもそれを口に出して利用しようとする輩が嫌いなのだと思う。

 今回選挙の争点として外国人対策があった。健康保険や生活保護などのセーフティーネットを不正に利用とする人。技能実習制度で来日後逃亡した人やその人たちによる犯罪。外国人投資家による不動産価格の高騰や水源地域の不動産取得。難民申請者による地域トラブル。インバウンドツーリストへの反感etc

思いついたことをテキトーに並べてみたが結構多い。そしてどれも一朝一夕では解決しない複雑な背景をもつ問題ばかりだ。

 ポピュリズムを唱える者にしばしばあることだが、問題を単純化し感情に訴える発言をすることが多い。人の関心を向けるという点では確かに有効だが、課題を解決するのにどのような政策があるのだろうか?

 そして法案作成には、さまざまな資料や統計データが必要となるし憲法との兼ね合いもある。エピソードだけ披露されてもどうしようもない。


 これを書いてる時点では選挙結果は不明だ。マスコミによると与党が過半数割れする可能性が高いそうだ。そうなった場合市場はどのような反応をするのだろうか。

 金融所得課税については致し方ないと思っている。ただその範囲がどこまで拡大するかが問題だ。社会保険料への反映も諦めているが、それは現役世代の負担軽減につながるならばという条件下による。

 俺が興味関心がある項目が、あまり争点になっていなかったような気がする。単にYouTube動画ばかり見てるせいだろう。ニュースですらネット配信ですませている。新聞は図書館に行ったときしか読まないし情報に偏りが出ているのかもしれない。


  


 

 

 

 

 

 

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