第11話 1限は体育




 一限は体育。


 体育教師の堂上は、開幕から激昂してた。


 理由は単純。クラス全員、校則違反の国際見本市であるため。


 モヒカンは頭髪規定違反。

 オカキのラフな格好は服装規定違反。

 ボルトアクション・ライフル所持は、銃刀法違反。

 etc.etc……。



「火器を学校に持ち込むな!」と、堂上。

「テイシエラ、だ」と、答えてツーブロックの軍人。


「いいからそいつを今すぐ足元に捨てろ」

「そいつではなくテイシエラ、だ」

「は?」


 全然かみ合わない会話。まったくばかばかしいやり取りだ。


 あまりのぐだり具合に通訳を務める委員長が、

「テイシエラは銃の名前です。おそらく」と助け船を出した。

「よし、委員長。では佐藤に今すぐを捨てろと伝えてくれ」片時もライフルから目を切らずに堂上が言った。


「無理です」

「なぜだ?」


「彼がからです」

「……ぐぬぬ」


 そりゃそうだろ……。こっちは丸腰、相手は銃持ってる。

 夏休み前までなら堂上得意のげんこつで、無理やり言うことを聞かせてたんだろうけど今となってはその交戦規定ROEも、大幅な見直しが必要なのは自明。



「誰だ!? 学校に犬連れてきた馬鹿は!?」 


 軍人の説得を諦めた堂上は、次なる獲物を見つけ腕まくりをした。

 お相手は皆と並んでお座りするシェパード。きちんと体操服も着ているし、静かに授業を受けてる。けど、犬。


「和田です」

 クラスを代表して委員長が答える。


「和田ぁ! せめて首ヒモを着けろ! 急に暴れたら大変だろ! 和田!! どこだ返事しろ!」


「わん」


「わぁ!? かむなよ? ……おいッ! 和田! 早くなんとかしろ!!」


「わん」

 

「ひぃ! 俺は犬が苦手なんだ。和田はこんなもん置いてどこいったんだ……」 


「そいつが和田です――」





◇◇



 堂上の退屈な説教。無為で、ただただ非生産的なたわごと。


「……ふん」


 俺は体育座りしたまま、組んだ腕に顎を沈め、遠く空を眺めた。


 こんな時はいつも、脳内戦闘訓練に費やすはずなのに、今日に限っては全然妄想がうまくいかなかった。


『突然、教室にテロリストが乱入!』 からのクラスの混乱が起きないのだ……。 


 黒板の前に立つマシンガンを持った覆面男達を、クラス中がゲラゲラ笑い、手を叩いて喜んじゃう。

 しまいには覆面をぐいぐい引っ張って遊んだり、泣いて嫌がるテロリストを窓から捨てたり……。


 想像の中のみんながたくましすぎて、緊迫感というものが全然無い!

 よって、俺が大立ち回りをする余地も無い……。




「――〇”&▽%$ッ!!」


 堂上はまだガミガミなんか言ってる。



「はぁ……、暑っうぅ……」


 そういえば、昨晩はなんか変な夢見た気がする。なんだったっけ? なんか不思議な夢だった気だけする。


 そんな事より。


 昨日は色々、ホント色々あったし。

 だからクタクタに疲れてた。でも歴史を気に掛ける男の中の男、高木たろすけは体に鞭打って昔のニュースを見漁った。

 そして色々調べて分かった事。


 見つけたのは、ちょうど一年前の記事。そこには目を疑う内容がてんこもり記されていた。


 日付はの9月1日――。





ぺん首相の演説及び緊急記者会見】


『国民の皆様、テレビ・ラジオでご承知の通り、31日23時59分、日本全土10カ所で正体不明の不思議穴(以後ダンジョンと呼称する)が発生しました。これにより、首都圏を中心として広い範囲でファンタジー現象が発生しています。被災された方々には心からお見舞いを申し上げます。

 なお、ダンジョンについては一部ファンタジー生物が域外に飛び出しましたが、これまでのところ外部への深刻な暴力被害は確認をされておりません。


 こうした事態を迎え、私を本部長とする緊急ダンジョン対策本部を直ちに設置いたしました。国民の皆さんの安全を確保し、被害を最小限に抑えるため、政府として総力を挙げて取り組んで参ります。国民に皆様におかれても、今後引き続き注意深くテレビやラジオの報道をよく受け止めて頂き、落ち着いて行動をされるよう心からお願いを申し上げます』


【記者質問】 


 ――復興実施本部の立ち上げと野党側の参画を呼びかけたが、復興実施本部はどのような権利や責任を有する会議体を考えているのか。野党への呼びかけは現在、外国民党のキャルメラ代表が行っているが、他党の代表がなぜこういう大事な呼びかけを行っているのか。そもそもキャルメラ代表は、外国民党を標ぼうしているが、彼は何人なにじんでどこの国家の議員なのか。また、「ソウリニタノマレテン」と言っていたが、キャルメラさんとどのような話をしているのか。総理は復興にメドがたったら退陣も辞さない決意なのか。


 総理回答:まぁまぁまぁまぁ。


 ――ダンジョン担当大臣を置く考えはあるか。ダンジョンや怪異、復興の会議や本部が乱立しているが、整理統合する考えはないか。


 総理回答:まぁまぁまぁまぁ。


 ――復興財源を増税で賄う考えはあるか。消費税を一時的に8000パーセントにするといった耳を疑う発言を、御党の国会議員がSNSを使って発信しているが彼らは正気なのか。また、総理自身は引き上げを考えているか。


 総理回答:まぁまぁまぁ、まぁ~まぁまぁまぁ。


 ――総理! おい! 総理!! 逃げるな!! オイ!! くそじじいいいい!!






 そして、大ダンジョン時代が到来したらしい。


 何度でも言うが、信じがたいことに日付が去年だった。


 母さんに聞いても「そういえばあったね『まぁまぁ問答』なんて。あったあった」とのこと。

 だが俺はこんなゴージャスなニュースし、ましてやその時期も異常。

 


 完全な【過去改変】。素晴らしい改変だった。



 母さんは「危ないからこれからもダンジョンなんか行っちゃダメだ」と言う。

 だから俺は「そうだね、闇の力には興味無いよ」って答えておいた。


 ダンジョン出現なんて知った当初はギュンギュンに興味あったけど、よく考えたら、あえて現世で行くこともない。ナゼって俺は天国の扉をくぐって異世界行きが決まっているから。


 すみちゃんの話では、魔王を討伐すれば、だいたい元の時間と場所に戻れるらしいし……。




 うふふ。異世界旅行にチート無双かぁ……。楽しみだぁ――。




 

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