慰霊の探偵たち

あさ223@カワセミ

1章

プローグ 

男は必死に走る。息が上がっている。男の後ろには影のような黒が人型になったような形をとっている化け物が追っている。


 (何も知らないで死ぬなんてごめんだ)


考えを巡らしながら走っている。目を辺りを見渡しながら、何かないかと必死に探している。


 (どうしてこうなった?)



***



もしも、世界中にダンジョンが現れたら。もしも、学校にテロリストがやって来たらそんな妄想じみたことを考えながら俺は授業を受けていた。


黒板には、先生が淡々と言葉を使いながら、教科書と似たような内容が書かれていた。生徒の数人が必死にノートに書き込んでいるが、大半の生徒が先生の言葉を眠り歌にして夢の中に旅っている。



俺こと、氷野悠木は眠気がやってくることがなかったが授業を真面目に受ける気になれず、暇潰しに現実だと決してあり得ないと思われる妄想をしていた。


 (もしも、そんなことがあったら誰も知らない未知があるかもな)


そんな妄想を考えている悠木は頬を緩ませて、天井を見上げていた。そんなことをしていれば


 「氷野、何を笑っている」


 「あ、すいません」


指摘されるのは当たり前だろう。真面目に授業を受けていた生徒が微かな笑い声をあげていることが目に入る。顔を熱くなっているのを感じながら


 (あー、やらかした)


と考えながら頭を机に下げた。


***


 《ピーンポーンパーンポーン》


授業を終了を告げるチャイムが鳴り、先生が終わりの言葉を告げた。授業が終わると生徒たちは友達に話しかけたり、本を読んだりして各々過ごしている。そんな中、悠木に話しかける人物がいる。


 「悠木、さっきはのはどうしたんだ?」


心配する言葉と裏腹にその男の表情はニヤニヤしていた。


 「言葉と表情が全然、違うぞ。暁斗」


その人物は佐崎暁斗、悠木の友人でよく絡んでいる人物。


 「おっと、顔に出ていたか」

 「全く、説得力がないだが?」


少し睨みながら言うと暁斗は顔を少し背けて下手な口笛しながら


 「何のことやら」


そんな言葉を聞くと笑いが込み上げてきた。


 「まったく、酷い」

 「おいおい。笑いながら言う言葉ではないだろ」

 「悪い悪い」


 「そういえば、噂知っているか?」


暁斗は腕を組みながら、いかにも真面目な雰囲気を出しながら言葉を発した。


 「噂なんてあったか?」

 「おっと、知らない。なら仕方ない。この佐崎暁斗さまが教えてやろう」


先ほどまでの真面目の雰囲気はどこに行ったのか、明らかにおふざけの雰囲気に戻っていた。


 「おい、さっきまでの真面目の雰囲気はどこに行った?」

 「ふむ、気にしたら負けだぞ」


 「 気にするわ 」


悠木は軽く暁斗を叩く。


 「まぁ、そんなことより、噂の話をしてやろ。多分、悠木が好きな話だぞ?」

 「おう。聞いてやろう。早くしろよ」


あまりにも早い変わり身に暁斗は苦笑をしながら話を続ける。


 「夕方の時間帯に影みたいな化け物が現れる噂だよ」

 「化け物?」

 「そう。化け物が人を襲う噂があるだよ」


 「信憑性はあるのか?」

 「あるなら噂みたいに流れてないだろ」


何を言ったんだと言う顔を暁斗はしながら、言葉を発した。


 「その噂は、《ピーンポーンパーンポーン》


悠木が言葉を完全に発する前にチャイムが鳴り、授業の始まりを告げた。暁斗はヤベと言葉漏らして慌てて、自身の机に戻っていた。


先生が入ってきて、授業が始まる。前回の授業の続きから始まって行く授業の中で


 (化け物か。調べてみようかな?)


***


学校が終わるチャイムが鳴り響いた。授業から解放された生徒が生き生きとしており、部活に行く者、友達と放課後何するか話している者。帰宅する者に分かれていた。


その中で悠木は学校が終わったら、すぐに帰宅の準備を終えて街に踊り出ていた。


街には、学校が終わった生徒たちが解放感に溢れていた。その中に目を少し輝かせてフード被って辺りを見渡す不審者、、氷野悠木がいた。


 (さて、噂は本当かな?)


周りは氷野悠木を見て、またか。という顔をしていた。それは呆れたような、達観したような視線が悠木に注いでいた。そんな視線に気がつかわけもなく、噂が本当かどうかを調べに夕方になる前の時間帯から調べ始めた。


***

1時間後

***


時刻は17時、夏が終わり秋に入りかけた季節では夏よりは日が落ちるのが早く、夕方と言って良い時間帯になった。


1時間探したが、成果はないどころか、サングラスを追加したことにより不審者感がより一層、増していた。


 (成果なしか。所詮、噂だからなぁ)


そんな風に少し気持ちを落ち込んでいると視界に黒猫が横切った。


 (猫? ついて行ってみるか)


その時は何故、猫について行く発想が出たことと目に止まったことも理解出来なかったがどうやら、俺は誘われていたんだろう。


***


猫を追いかける。猫は路地裏に悠木を導くように離れ過ぎず、近すぎない絶妙な距離を保っている。悠木は猫を追いかけることしか頭にないのか、言葉を漏らすこともなく無心で追いかけている。


そして、猫は止まり悠木の方に向きニヤリと嗤った。猫は溶けるように消えた。


その間、悠木は反応することはなかった。


そして、前に屈み込み、荒呼吸を繰り返す。


 (何だ? 何だ? 俺はどうしてた? なんで猫を追いかけた? なんで何も考えなかった?)


悠木はすぐに立ち上がり、辺りを見渡す。辺りは路地裏であるが、あきらかに様子がおかしい。まだ、夕方のはずなのに、空は太陽どころか月も見当たらない。暗黒な空が悠木を見下ろしていた。


 (ここはどこだ? 俺の街でこんなところはなかったはずだ。俺の知らない未知?)


悠木は体が寒さによって震えているみたいに体が震えていた。だが、悠木は顔の頰をあげていた。恐怖心に体が支配されているのに心の底にある好奇心が溢れていた。


 (空には何もない。周りにはゴミが一つも落ちてない。まるでハリボテだな)


悠木は恐怖心より、好奇心が勝ってきたのか。体の震えが落ち着いて来た。


悠木は深呼吸を一回して、呼吸を一定数に落ち着かせる。


 (ふぅ、落ち着け。興奮し過ぎて判断を見誤るな)


悠木の思考、すぐに逃げるようにか腰を下げて周りに注意を向けている。その姿はあきらかに慣れている様子で普通の高校生の姿ではないだろう。


 (何かあるはずだ)


警戒態勢に移行したのか、付けていたサングラスを外して、内ポケットに入れた。


 『GAAAAAAAAAA』


それは現れた。影のような黒色が無理矢理、人型に形とっているようなものだった。人型を取っていても、鎌みたいものが影から繋がっており明らかに穏やかな様子が見えない。


悠木はそれを見た瞬間、目を見開き顔から一滴の雫が垂れる落ちる。


 (こいつはやべぇ)


—————————————————————


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