第19話 新しい恋の始まり



 高校に入って数ヶ月。環境は変わったけど、雄也とは変わらず仲良く過ごしていた。


 学校が違っても、毎日メッセージを送り合ったり、週末にデートしたり——離れている分、一緒にいる時間を大切にするようになった。


 そんなある日、紗奈から突然の提案があった。


 「ねえ、今度ダブルデートしない?」


 「ダブルデート?」


 「うん、私と健、彩花と雄也で!」


 「えっ!? ちょっと待って、紗奈と健って……?」


 「……付き合うことになった。」


 紗奈は少し照れながら、でも嬉しそうに微笑んだ。


 「えええ!? いつの間に!?」


 「最近。まあ、いろいろあったけど……ちゃんと向き合ってくれてね。」


 健と紗奈は、いつの間にか特別な関係になっていたらしい。


 「それで、せっかくだしダブルデートしようって話になったの!」


 「うん……いいかも!」


 私はすぐに雄也に連絡を入れ、ダブルデートが決まった。


 ***


ダブルデート当日


 待ち合わせは駅前のショッピングモール。


 「お待たせ!」


 紗奈と健が手を繋いで現れた。


 「ほんとに付き合ってるんだ……!」


 私が感動していると、健が「なんだよ」と照れくさそうに顔を背ける。


 「で、今日はどこ行く?」


 雄也がリーダーシップを取りながら、みんなでショッピングモールを回ることに。


 まずは映画館へ。今日はカップル向けの恋愛映画を見ることになった。


 「こういうの、慣れてないんだけど。」


 健はちょっと恥ずかしそうだったけど、紗奈は「いいじゃん、ロマンチックなのも!」と楽しそうにしている。


 映画の間、私はずっと雄也の隣に座っていた。スクリーンの光が彼の横顔を照らし、時折チラッと見てしまう。


 (雄也、かっこいい……。)


 映画が終わった後、みんなでカフェに行くことにした。


 「ねえ、どう? 健って付き合うとどんな感じなの?」


 私は興味津々で紗奈に聞いた。


 「意外と甘えん坊かも。」


 「は!? ちょっと、余計なこと言うな!」


 健が慌てているのを見て、みんなで笑った。


 「彩花と雄也はどうなの?」


 「えっ?」


 「高校違うのに、全然ラブラブじゃん!」


 「そ、そんなこと……!」


 顔が熱くなったけど、隣の雄也は落ち着いていて、私の手をそっと握った。


 「まぁ、ずっと好きだからな。」


 「ちょ、雄也!!」


 「ほらほら、こういうとこ!」


 紗奈がニヤニヤしながら突っ込む。


 (もう、恥ずかしい……!)


 でも、こうやってみんなで笑い合えるのが、すごく楽しかった。


 ***


 デートの終わり、帰り道で雄也と二人きりになった。


 「楽しかったな。」


 「うん。紗奈と健、お似合いだったね。」


 「俺たちも、だろ?」


 雄也がニッと笑いながら、私の頭をポンポンと撫でる。


 「もう、からかわないでよ!」


 「からかってない。……好きだから、言ってるだけ。」


 急に真面目な声になるから、心臓がドキドキする。


 「俺たちは、これからもずっと一緒だよな。」


 「……うん。」


 手を繋ぎながら歩く夜道。


 春の風が、そっと背中を押してくれるようだった。


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