番外編 君はいつも眩しい



 俺は昔から、彩花のことを知っている。


 小学生の頃からずっと一緒だった幼なじみ。でも、中学で再会したとき、正直驚いた。


 ——こんなに綺麗だったか?


 彩花は背が伸びて、大人っぽくなっていて、そして誰からも憧れられる存在になっていた。


 いつの間にか、生徒会長として堂々とみんなを引っ張るようになっていた。


 俺が生徒会に入った理由は、もちろん彩花がいたからだ。


 最初はただ「また一緒にいたい」という単純な気持ちだった。だけど、気づいたら——それ以上の感情になっていた。


 俺は、彩花のそばにいることが当たり前だと思っていた。


 だけど、それが崩れそうになったのは——健の存在を意識したときだった。


 (健は、彩花の元カレ。)


 小学生の頃から、ずっと彩花のそばにいた。


 そんな健と話している彩花を見ると、なんとなく心が落ち着かなくなる。


 (俺は……どうしたいんだろう。)


 自分の気持ちを、まだ整理しきれずにいた。



---




 遊園地デートが決まったとき、俺は内心、かなり嬉しかった。


 二人きりで過ごせる時間。誰の目も気にせず、彩花といられる。


 だけど、同時に不安もあった。


 (俺たちって、どういう関係なんだ?)


 友達? 幼なじみ? それとも——恋人未満?


 観覧車の中、俺は思わず聞いてしまった。


 「もし、俺が他の誰かを好きだったら……どう思う?」


 彩花の目が揺れる。


 (やっぱり、少しは俺のこと意識してくれてる?)


 そんな期待を抱いたけれど、すぐに不安がよぎる。


 (もし、彩花の気持ちが俺に向いてなかったら?)


 その答えを知るのが怖くて、俺は曖昧に笑って誤魔化した。


 ——でも、その日、決意した。


 (もう、ごまかしたくない。)


 ちゃんと伝えよう。俺は、彩花が好きだ。


 生徒会室で告白したとき、彩花は驚いた顔をしていた。


 (やっぱり、急すぎたか……?)


 すぐに答えはもらえなかった。でも、次の日——。


 「……私も、雄也が好き。」


 その言葉を聞いた瞬間、胸がいっぱいになった。


 (よかった……。)


 俺の気持ちは、ちゃんと届いた。



---




 付き合い始めると、思った以上に楽しいことばかりだった。


 彩花と一緒にいると、何をしていても嬉しくて、どんな日常も特別に思えた。


 でも、同時に——不安もあった。


 (俺たちは、ずっとこのままでいられるのか?)


 そして、その不安が現実になる日が来た。


 「……俺、○○高校を受けるつもりなんだ。」


 彩花と俺の志望校が違うと知った瞬間、胸が苦しくなった。


 ずっと一緒にいると思っていた。高校でも、大学でも、その先も——。


 だけど、違った。


 彩花の声が震える。


 「……そっか。」


 (ごめん……。)


 俺は、彩花の進路に合わせることもできた。でも、俺には俺の夢があった。


 「彩花が行きたい高校に行くのが、一番いいと思う。でも、俺は俺のやりたいことを選びたい。」


 そう伝えると、彩花は無理に笑った。


 「……受験、頑張ろうね。」


 (……本当は、寂しいよな?)


 でも、彩花は強いから、本音を言わない。


 俺たちはこれからも一緒にいられるのか?


 そんな不安を抱えながら、俺は彩花の手を握った。


 「大丈夫。俺たちは、離れても変わらない。」


 俺がそう言うと、彩花は少しだけ微笑んだ。



※15話時点での番外編となります。

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