第5話 揺れる気持ち

放課後、私は紗奈と駅前のカフェにいた。


 「彩花、最近忙しそうだよね!」


 ドリンクを受け取りながら、紗奈が笑顔で言う。


 「まあね、生徒会の仕事が多くて。」


 「雄也と過ごす時間も増えてるでしょ?」


 「……まあ、副会長だし。」


 「それだけ?」


 紗奈はストローをくわえながら、じっと私を見つめる。


 「彩花って、雄也のことどう思ってるの?」


 予想はしていたけど、やっぱり聞かれた。


 「……大事な友達、かな。」


 そう答えた瞬間、胸がチクリと痛んだ。


 「そっかぁ。でもさ、私ね、雄也に告白しようと思ってるんだ!」


 「え……?」


 思わず手が止まる。


 「やっぱり好きなら、ちゃんと気持ちを伝えたいし!」


 紗奈の笑顔はまっすぐだった。その想いを否定する理由なんてない。


 「応援、してくれるよね?」


 私は笑顔を作って、「もちろん」と答えた。でも、胸の痛みは消えなかった。


 ***


 カフェを出て、帰ろうと歩いていると、駅前で雄也の姿を見つけた。


 「あれ、彩花?」


 「雄也? こんなところで何してるの?」


 「ちょっと買い物。彩花は?」


 「紗奈とカフェ行ってた。」


 「そっか。帰り、一緒に歩く?」


 その一言に、思わずうなずいてしまった。


 並んで歩く帰り道。雄也の隣にいるだけで、心臓が落ち着かない。


 「最近、彩花と過ごす時間増えたよな。」


 「生徒会だからね。」


 「それだけ?」


 紗奈と同じ質問。私は思わず足を止めた。


 「……何それ?」


 「いや、ただ……昔みたいだなって思って。」


 雄也が少し照れくさそうに笑う。


 「小さい頃は、俺たちずっと一緒だっただろ?」


 「そうだね。」


 「またこうして、一緒にいる時間が増えて、ちょっと嬉しい。」


 その言葉に、ドキッとする。


 「彩花にとって、俺ってどんな存在?」


 不意にそう聞かれ、心臓が跳ねた。


 「えっ……生徒副会長?」


 冗談っぽく答えたけど、雄也はふっと笑って、優しい目で私を見た。


 「じゃあ、それ以上になれるように頑張るよ。」


 冗談みたいな、でも本気みたいな言葉。


 「……なにそれ。」


 私の気持ちは、また少し揺れた——。

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