第2話

 ネオは,目の前で伸びている三人を見下ろしながら,どうしたものかと困惑する。

流石にここまで弱いと思っていなかった,というのが彼女の本音だ。

その証拠に,ネオはこの戦闘が始まってから一度も弾を消費していない。

それに対して,不良三人組は銃を使ってこれである。


「てか時間やばいじゃん。」


スマホを見れば,現在時刻は7時05分。

3分くらいで終わらせる予定だったが,少し体が固まっていたようだ。

ネオはそのまま早歩きで学校へと向かう。(もちろん不良三人は放置)



 ネオは到着して早々,数日前まで通っていた中学校よりも遥かに大きい校舎に若干面食らう。

中央に東京タワーの三倍くらいの大きさの塔があり,その周りを四つの校舎が囲っている。

外からでは囲いの校舎に遮られて少ししか見えなかった塔も,校門を潜るとすぐ見えるようになった。


「うわ,すご。こんなん漫画でしか見たことないわ。」


まだ早い時間ではあるが,意外にも人は集まっていた。

再度,事前に配布されていた地図で集合場所を確認する。


「(ここが西門…‥,いや東門?で第一校舎が南門の左側?何これ。)」


あまりの複雑さに思わず顔を顰める。

初音ネオ,もとい初音静奈は超が付くほどの方向音痴だ。

ルートさえ覚えていればちゃんと行けるのだが,分からない道だとすぐに迷ってしまう。

そのせいで昔,スーパーに行こうとして隣町の駄菓子屋に着いたことがあるほどだ。


「(分かんない……。他の人は友達と一緒に来てるし……。)」


そう考えながら,今になって自分の友達の少なさにため息をつくネオ。

素直に在校生に聞くかと歩み出そうとしたところで,一人の少女に呼び止められる。


「君,もしかして新入生か?」


あまりにも突然のことだったので,驚いて後ろを振り向くと……


「(うお)」


特大な果実が目の前にあった。

爆弾を目の当たりにしたネオに,背徳感と喪失感が同時に襲いかかる。

目の前には爆弾,しかし目を少し下に逸らして見えるのは私のつま先。障害物は何もない。

世辞辛い世の中である。


「お,おい。身長差もあるとは思うが,あんまり胸を見つめるな。」


どうやら,無意識のうちに目の前の爆弾を凝視していたようだ。

彼女は少し顔を赤らめながらも,眉間に皺を寄せて言う。

全体を見た感じ『風紀委員』と言うイメージがした。


「私は風紀委員長の整戌ととのいセイだ。君の名前は?」


彼女の服装は学校の制服とはちょっと違うもので,どちらかというと軍服に近いイメージだった。

プラスして,腕の部分には『風紀委員』と刺繍が施されている。

そのことからも分かるように,どうやら彼女は本当に風紀委員のようだ。

風紀委員長だったのは少し予想外ではあるが……。


「私は初音ネオです。よろしくお願いします,セイ先輩。」


「い,いきなり下の名前で呼んでくるのは早いのではないか?そ,そういうのは,こ,恋人になってからというものだと……。」


「そうなんですか?すいません。私の中学校じゃ,少しでも相手より下に回ると虐められていたもので……。」


「い,いや,大丈夫だ。そのまま下の名前で呼んでもらっても構わない。それよりも,私にとっては君の中学の話の方が気になるのだが。」


「普通の中学校でしたよ?ただちょっと,日常的にトラブルが頻発する学校だったってだけで,先生もいい人でしたし。」


「日常的にトラブルが頻発する学校は普通の学校とは言わないと思うが……,まぁ良いか。それで,第一校舎の第四演壇室に連れて行けばいいのか?」


無表情のまま,ネオが聞いたことない言葉(普通に何言っているのか理解できてないだけ)を羅列していく彼女を驚愕した表情で見つめるネオ。

そして,すぐさま地図を見て,目的地がそこで合っていることに二重に驚くネオ。


「はい。ありがとうございます,セイ先輩。」


「そ,それでは着いてきてくれ。」


少し顔を赤らめて前を歩くセイに,不思議そうに首を傾げて,ついていくネオ。

風紀委員長と新入生が入学早々一緒にいるのは異例だからか,周りの視線が痛い。

しかし,ネオはそれも気にならなくなるほどの衝撃を,数分後に受けることになる。


────


微百合要素を交えれたらなとか思いながら執筆をしていた,作者のぞーすいです。

『詩女』の第二話,いかがだったでしょうか?

次のお話は学校に入ったところからになります。

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コメントもお待ちしております。


それでは次のお話でお会いしましょう。

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