御伽噺の真実
聖女システィーナを仲間に加えたザレン達一行は、その後も世界を救う旅を続けた。
魔王が居ると言われている魔王城までの旅路は長い。当たり前だが、その間にも多くの魔物や汚い人間との争いは起きる。
特に、アリナとシスティーナはその見た目が美しく、とてもか弱そうに見えることから頭の悪い者たちからやっかみを受けることが多かった。
システィーナはともかく、アリナは一流の狩人。ある程度実力のある者なら、その歩き方で素人なのかどうかの判別ができるのだが、それが出来ないものと言うのは多いのだ。
行く先々でトラブルを引き起こし、ザレンやアリナが暴れて事が収束する。
このトラブルの流れも、勇者ザレドの旅路と同じ流れを辿っていた。
「あの山奥に大盾使いの達人がいる?」
「噂で聞いた限りは。そして、情報屋に確認を取ったけど事実と見ていい。かなりの実力者」
「その方が、どうかされたのですか?」
白いローブに身を包みながら、可愛らしく首を傾げるシスティーナ。
アリナは自分の身を自分で守れるだけの強さがあるが、システィーナはザレン以上の世間知らずで力も無い。
神の奇跡の使い手として、治癒の力や仲間を補助することには長けていたが、それ以外は素人以下。
聖女と呼ばれる理由は、何もその実力だけだけではない。その美しすぎる顔もまた、聖女たる所以なのだ。
そうなれば、多くの人々が彼女に釘付けとなる。必然と厄介事と増えるとなれば、顔の一つぐらい隠すだろう。
「私とシスティーナは後衛、ザレンだけが前衛。私達のパーティーはザレンへの負担が大きい。この前の魔物の大量発生の時、ザレンがかなり苦しそうだった」
「あぁ。魔物の活性化によって森の奥にいた強い魔物が暴れた影響で、村に魔物が押し寄せたやつだね。確かに僕一人で前線を張るのはキツかったかも」
「そう。私も単体の狩りは得意だけど、多数を狩るのは苦手。せめて、時間を稼ぐ........いや、雑魚を薙ぎ倒しながら進む者が必要」
「なるほど。私は戦略や作戦には詳しくありませんが、確かに必要に思えますね」
ザレンパーティーは確かに強い。
稀代の天才達が集まっていると言っても、過言ではないほどに。
しかし、彼らは乱戦に弱いという弱点を抱えていた。ザレンも所詮は人であり、一人でできる限界は必ずある。
魔王討伐の旅路がどうなるか分からない以上、戦力の増強は必須と言えた。
「なら、その人に会ってみよう。僕たちの話を聞いて、仲間になってくれるかも」
「仲間になってくれなくても、しつこく行けば大丈夫。そこの世間知らずのお嬢様は、それで行けた」
「いや、私は最初から乗り気でしたよ?!ただ、脱出するのが難しいと言うだけで!!」
こうして、ザレン達は大盾使いの達人と呼ばれる者に会いに行ったのだが........
「見てわからんのか?俺は今忙しい。帰れ」
案の定相手にされることも無く、帰るように言われてしまったザレン達。
しかし、ザレン達はそんな事など気にもせずに、達人が振り回す大盾を見て感動していた。
盾は滑らかに、そして力強く動き続ける。
武術の一つの型なのだが、知識のないザレン達はその型を知るはずもなかった。
しかし、その素晴らしい動きは誰が見ても感動するものである。
「凄まじい盾捌きだ。僕もあんなふうにできるかな?」
「筋力的に無理でしょ。あの盾、全部鉄でできてる」
「わぁ!!凄いですね!!」
「おい、人の話を聞いているのか?」
「こんなに凄い盾捌きができる人を、仲間に加えない手はないよアリナ!!ねぇ!!僕と一緒に魔王討伐に行かない?!」
「まずは話を聞け?俺の言葉は届いてないのか?」
ザレンは直感した。
これほどの実力者が、こんな山奥で隠れて暮らしているなど勿体ないと。
この技は世界に見せつけるべきだと。
ザレンはその盾の美しさに一目惚れし、絶対に仲間に加えてやろうと心に決める。
達人の言葉は耳に入らなかった。
「僕はザレン。魔王を討伐した世界を平和にする為に旅をしているんだ。是非僕達のパーティーに入ってくれないか?」
「断ると言っている。俺は新たな盾の可能性と、強さを探すのに忙しいんだ」
「そう言わないでくれよ。あ、お兄さんの名前は?」
「........ダレスだ」
「ダレスだね。よろしく。で、入ってくれる?」
「入らんと言っている。帰れ」
まるで取り付く気も無いダレスと、どうしてもパーティーに入れたいザレン。
その様子を見ていたアリナは溜息を着くと、ザレンの服を引っ張った。
「一旦帰る」
「え、なんでさ!!」
今すぐにでも彼をスカウトしたいザレンは、バタバタと暴れるがアリナは冷静であった。
ザレンの耳元で、ダレスに聞こえないように小さな声で囁く。
「ザレン、彼は職人気質の人間。私達のパーティーに入るメリットを示さなければ、興味を示さない」
「つまりメリットを示せばいいんだね?」
「そう。帰って一旦考える」
「私もお手伝いしますよ。力になれるかは分かりませんが」
そうして、ザレン達は大人しく引き下がる。
「騒がしい子達だったな........」
ダレスは久方ぶりの訪問者がこんなにも騒がしく、そして夢見がちな少年であったことに少し笑いながら盾の修練を続けた。
そして翌日。
「来たよ!!ダレン!!」
「........帰れ」
当たり前のようにやってくるザレン。ダレスは諦めの悪いザレンに少し嫌な顔をしながら、“帰れ”と突き放す。
が、今日のザレン達は違った。
「いーや、帰らないね。なぜなら、僕達のパーティーに絶対に入ってもらうから」
「断る。俺は盾の────」
「盾の実践相手、欲しくない?」
「........何?」
アリナの一言に、ピタリとダレスの動きが止まる。
“掛かった”。
ザレン達の心の中は、この言葉で一致していた事だろう。
ダレスは盾の可能性を追い求めるために、この山奥に篭って修行をしている。
しかし、実践相手は少ない。
最近は活性化した魔物達がよく襲ってくるので暇はしていないが、出来れば思考を持った人間と戦いたいと思っていたのだ。
そして、アリナ達はその欲を見抜いた。
「私達が相手になってあげる。システィーナは神の奇跡しか使えないけど、私とザレンは一通りのことが出来る」
「........それはお前達が弱ければ意味の無い話だ」
「弱いと思う?私達が。そう思うなら、尚更私達に着いてくるといいよ。世界の広さを教えてあげる」
苦し紛れの反論も、全てを見抜いているアリナの前では意味は無い。
そしてトドメの一言をザレンが言った。
「盾の可能性を知りたいんでしょう?なら、僕達と一緒に魔王を討伐して、その可能性を証明しようよ。世界各地に出現して暴れ回る世界の脅威、そんな相手に対等に........いや、それ以上に渡り合えたら盾の可能性を示せたと言えるんじゃない?」
その言葉は、かつて勇者ザレンがアレスに投げかけた言葉と似ていた。
『魔王を討伐する魔法。僕達で作ってみようよ。魔法に不可能はないんだろう?なら、証明してみないとね!!』
ある者は盾の可能性の証明を。ある者は魔法には不可能は無いと言う証明を。
そして、この言葉は実は物語に唯一書かれていた真実である。
虚言と妄想によって彩られたそのおとぎ話の中で、唯一の真実。
かつて勇者が残した言葉を、ザレンは意図的になぞったのだ。
「........はっ!!生意気な奴らだ。だが、いいだろう。面白そうじゃないか」
「そう来なくっちゃ。行こう。世界を変えに」
「んなもんに興味はない。俺は、俺の価値を証明するだけだ」
「それでいい。私達は、それぞれの思惑があってここにいる」
「よろしくお願いしますね。ダレスさん」
こうして、未来の勇者パーティーが結成された。
その裏で、魔王に挑み大敗を喫した連合軍が居たとは知ったのは、それから二ヶ月後の話であった。
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