あの世で一緒に

王子と姫様の次の逢瀬が行われるまで、毎日青年はお二人を待ち続けました。

待ち伏せを始め七日目、ついにお二人が現れました。

「ごめんねエミリー。待たせてしまって・・・。」

「いえ、お気になさらないで下さいまし。」

王子は着ていた上着を姫様に掛けました。

「・・・寒いでしょ。これを着たら少しは暖かくなると思う。」

「あっ・・・・ありがとうございます・・。」

お二人は小屋に向かって歩き出しました。

するとその時、姫様は後ろから何かが近づいて来る気配を感じました。

姫様は何事だろうと後ろを振り返ると、

一人の青年が剣を王子に向かって振り上げているではありませんか。

「っカール様、危ないっ!!!。」

王子をかばったせいで、剣は王子ではなく、姫さまに刺さりました。

「エミリー!!?。」

どさっと倒れた姫さまを抱き起こすと、姫様のお召し物が真っ赤な血の色に染まっていました。

「エミリー!エミリー!!・・・・っなんで、僕をかばってこんな・・・・っ。」

王子が愛してやまなかった姫様は、王子をかばって死んでしまいました。

目の前に居る青年の手によって。

「・・・君でしょ。僕のエミリーを殺したのは。」

王子は青年を入らみました。青年は何の言葉も出てきませんでした。

王子は短剣を抜き、青年に斬りかかろうとしました。

しかしその手を止め、自分の方へ剣の先を向けました。

「・・・エミリーがいない世界で生きていくなんて、僕には出来ない。だから僕も死ぬよ。

それが君の望みでしょ。」

そして、自分の胸を貫きました。

「ぅっ・・ぐ・・っ!!」

残りの力を振り絞って王子は姫様を抱きしめました。

青年は驚きました。なぜなら王子が穏やかに微笑んでいるからです。

「エミリー・・愛しているよ・・・」

そしてゆっくりと息を引き取られました。


昔々ある所に、氷の国の王子様と宝石の国のお姫様がいました。

お二人のお墓はかつての氷の国と宝石の国の国境にひっそりとではございますが、仲良く並んでいます。

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