最後を看取るまで

路傍の石

抗がん剤一発目

第1話 発端

「何だか首に出来物が出来てるんだよね」


 母が最初に異常を訴えてきたのは2023年1月の事だった。

 当時、脊椎管狭窄症で通院していた母は、既に家の事や趣味であった水泳等もやらなくなっており、ほぼ私が家庭内の事をしている状況でした。

 その為、いつも検査をしているわけだからあまり深くは受け止めませんでした。


「病院には行ってるんだから、先生にちょっと聞いてみたら?」

「そうする」


 その後診察をしてもらった結果、恐らく炎症だろうとの事で抗生物質を貰って帰って来た。

 その時は大した事が無くて良かったとそれ以上は突っ込まなかったのですが、その後も出来物は治らず、不思議に思いながらも母もそれ以上は私にも医者にも相談せずに月日が流れる。


 そして、その年の夏。8月中旬に母がぎっくり腰となり、いよいよ何も出来なくなり、日常生活で私の介助が少し必要となった。

 それでも、最低限の事は自分でやりたいと出来る事はやっていた母だったが、11月中旬の事。


「腫れがでかくなってきたんだ」


 最初は何の事を言っているのかわからなかったのですが、以前話に出た首の出来物が実はずっと治っていなかったと聞いて驚く。

 私ももっとよく観察していれば良かったのですが、当時髪が長かった母の首元はよく見なければわからない位置だった。

 言われて触ってみると確かに大きい。

 これはもう炎症ではないだろうと病院へ。


 そこで診察した先生が始めて、


「もしかしたら癌かも……」


 と、疑いをもち、生検をする事になった。

 そして、11月の末に結果が出る


「首の腫れの組織を調べたところ、癌の疑いがあります。恐らく、悪性リンパ腫でしょう」

「悪性リンパ腫ですか?」


 癌という話では?


「血液の癌です。血液内科の先生を紹介しますので、そこで精密検査を受けて下さい」


 血液の癌……? こんなに元気なのに?


 告知という事で呼ばれた私は、それでも今一ピンとこず、先生の口調からもそこまで大事な物ではないのだろうと思っていた。

 

 しかし。


 ここから1年2ヶ月の闘病生活が始まった。

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