私が消える方法

舞季

私が消える方法

暗い暗い、何もない道をひたすら歩いている。

そんな気持ちだった。


「みんな心配しているよ。」

「あなたが消えたら悲しまない訳ない。」

「ゆっくり治していけば良い。」


みんなそう言ってくれる。

なんも取り柄のない私の事を。

鬱病なんて人それぞれとは聞いていた。

私もそんな風になるとは思えなかったから。


「俺は悠の事守るから。」

心配そうに言う夫もいる。

これ以上何がほしいのだろう。

どんなに優しい言葉を貰っても、自分にそんな価値はないと思ってしまう。

もう、限界だった。


外に出るには寒い格好だった。

それに小雨も振っている。

まるで私の心の中みたいに。

なんで、私は生まれて、恋をして、ここにいるのだろう。

私なんて、何の価値もない。

消えて、何者にもなりたくない。


そんな事をぼそぼそと呟いていると後ろから抱き締められた。


「寒いでしょ、そんな格好じゃ。」

「・・・・・」

「遅くなってごめんね、悠。」

いつも私が消えたいと思うと現れる。

なんでこの人は私を見つけるんだろう。

居ないならその方が良いのに。

その言葉は頭の中でなく、口から零れていて、夫は優しく抱き締めた。


「悠の事愛してるから。どこにも行かないで。」

いつも言われるその言葉に、腕の力に私は逆らえない。


いつになったらこの闇から抜けれるの。

お願いしたら、私をこの苦しみから解放してくれるの。

何も言えず、私は夫の腕の中にいた。




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