一条月華その2③
二限が始まる直前、アキちゃんからメッセージが一つ。
『
ものすごく上機嫌だが、自分の慕うお嬢様から大量の下着を提供されそうになったことは、気にしていないのだろうか? いや、気にしていたのはサイズか……。
ということは、もしもサイズが合えば履いたと? それとも、頭にかぶる?
中々に特殊な趣味を……いやいや、そんなこと些細なことじゃないか。
どんな性癖があったとしても、アキちゃんは俺の
満面の笑みで受け入れるし、ご両親には黙っておこう。
それよりも、考えるべきは次の休み時間だな。
アキちゃんから聞いた話によると、
一つ目が、俺にアキちゃんからのいじめを目撃させること。
二つ目が、教室から出てきた俺と直接コンタクトをとること。
ただし、二つ目の行動パターンに入るのには法則があり、一つ目の条件を満たした場合のみ、二つ目の行動パターンへ変化するそうだ。
そういえば、昨日はバッチリいじめの現場を確認してしまっていたな。
なので、今日は絶対にいじめの現場を目撃しない。二つ目の行動パターンに入られたら、アキちゃんと
というわけで、二限の休み時間になったので教室を出て、トイレへと向かおう。
教室にいると
安全な場所は、トイレ以外どこにも……
「
と、そこで背後から声が一つ。
「どうした?」
「ちょっと私と話をしようよ。今後のこととか!」
「分かった。けど、その前にトイレへ――」
「そんなの後! 我慢できるでしょ」
おい、ちょっと待て。まさかの
「あのね、次の休み時間だけど、
「いやぁ~、今日は大丈夫じゃないかな?」
おパンツが真っ黒で、俺に見られたら困るみたいだし。
「
正義感が奇跡を起こして、正解を引き当ててやがる……。
俺が現場を目撃すれば、アキちゃんは今日のいじめをやめることができる。
しかし、その後に……いや、待てよ。
「だとしたら、動く意味が出てくるかもしれないな」
「でしょ?」
先程の休み時間もそうだったが、
そうして、俺のことしか考えていないとなると、アキちゃんが目に入らない。
だが、逆に俺がいじめを目撃し、
つまり、アキちゃんは
よし。それでいこう。
わざといじめの現場を俺が見ることで、アキちゃんの評価を――
『
その時、俺が装着したワイヤレスイヤホンから
この女は、なぜアキちゃんに脱衣を要求しているのだ?
『ですが、
『先程の授業中に考えたのですの。
この女、いよいよ頭がおかしくなったのか? いや、元からだ。
『ダメですって! そもそも、サイズが合いませんよ!』
『ごちゃごちゃ言わずに早くなさい! 下だけなら問題ないでしょう!』
性別という問題は、気にしていないのだろうか?
『あっ!』
『ふむ……。白の清楚な感じですわね』
どうやら、アキちゃんは
というか、白の清楚な感じだと?
つまり、アキちゃんは…………ブリーフ派か!
てっきりトランクスだと思っていたのだが、ブリーフか……。
『
『何を恥ずかしがることがあるのです』
恥ずかしがることしかないわ。
女子から問答無用で脱がされて下着を凝視されるなんて、恥ずかしいに決まってるだろ。
『さ、早くそれを渡しなさい。それとも、
『…………自分で脱ぎます』
アキちゃんが、声を震わせながらそう言った。
ワイヤレスイヤホンから聞こえる衣擦れの音。
今、アキちゃんは慕っている女性の前で、ブリーフを脱いでいる。
なんということだ……。
『ふぅ……。これで、次の休み時間に
問題しかねぇわ。
なんで、ブリーフ着用のお嬢様を見なきゃならんねん。
『さ、アナタもはきなさいな。無着用など、
『…………はい』
ブリーフを着用するのは恥じゃないんかい。どうなってんだよ、
「じゃあ、決まりだね! 次の休み時間は
むしろ、ひどい目に現在進行であっているのは、アキちゃんです。
「いや、やめておかないか? 色々と衝撃的な光景が広がる可能性が……」
「ダーメ! さっき、悪くないって言ってたでしょ? 男なら、二言はなしだよ!」
まずいぞ……。このままでは、次の休み時間にブリーフお嬢様を見る羽目になる。
しかも、女性ものの黒の下着を着用したアキちゃんとも出会う羽目になる。
いったい、どうすれば……ん? アキちゃんからメッセージだ。
『絶対に、今日は俺と
切羽が詰まりすぎてて、困っちまうぜ。
「
「ああ、気にしないでくれ。ちょっと親から連絡が来ただけだから」
えーっと、アキちゃんは
『はみ出てない?』
『……死ね』
やっぱり、アキちゃんは照れ屋さんだな。
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