1話 魔法少女は繰り返す

 四角い箱のような部屋。ある種の独房のようにも見えるその中で、部屋の中央にあるベッドの上に少女はいた。

 まるで色が抜け落ちてしまったかのような白い髪、白い肌。


 彼女は目を覚まして上半身だけ起き上がらせると思いっきり伸びをする。


「ん〜!」


 そうすると可愛らしい声が出る。

 しばらくすると今度は覚悟を決めたような表情を見せる。


「よし!今日も1日頑張るぞい!ぞいぞい!!」


 ・・・気のせいだったかもしれない。


 彼女は枕元にあるデジタル式の時計を見る。時刻は6時半を指しているが彼女が見ているのはそこではない。


「2168年、か・・・覚悟してたけど実際に目の当たりにすると心にくるものがあるね。」


 彼女は少しの間複雑そうな表情をするが自分でそのことに気づき意識的に口角を上げる。


「まあ、何年経とうが私は魔獣を討伐するだけですからね!それさえ覚えていれば私は大丈夫。」


 自分に言い聞かせるようにそう言っていると部屋のドアがノックされ朝食の準備ができたことが知らされる。


 急いでパジャマを脱ぎ、タンスにしまってある大量の同じデザイン、同じサイズの白いワンピースの1つを手に取り着替える。魔法を使い顔を洗った後、髪を優しく梳かす。


 部屋を出る時、そこにはもう寝起きのあどけない少女はいなかった。


 現存する魔法少女の中で、最古にして最強とされる人物。

 序列1位『回帰』の魔法少女リリカの姿がそこにはあった。

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