第2話 旅立ち
私は、通り魔から女の子を庇って死に、異世界へと転生する事になった。女神様より力を与えられ異世界へと転生した私は、少しだけ冒険への興奮を覚えていた。
~~~~~~
とりあえず、異世界に転生した事は理解した。現在の所の目的はこの丘から見える町らしき場所にたどり着く事。出来れば日が暮れる前に町にたどり着きたいけど。
でも、その前に女神様に願い、与えられた力の事を確認しておきたかった。
「え~っと。確か。≪マーケットオープン≫」
私に与えられた力、≪
私が力の起動ワードを口にすると、パソコンのウィンドウが立ち上がるように、私の眼前にディスプレイが浮かび上がった。それはまるで某通販サイトのページのようだった。
私の力は、このディスプレイを通してあらゆる銃や防具、兵器などを買う、という物。一番上には検索用のバーが。その下にはジャンル分けのためのボタンがあった。
ジャンルは4つに分けられている。『銃火器』、『個人装具』、『兵器』、『その他』。
『銃火器』はその名の通り、ハンドガンやアサルトライフル、果てはグレネードランチャーやロケットランチャーなどが分類されている。
『個人装具』は防弾ベストや銃のマガジンを携行するタクティカルベストに加え、暗視ゴーグルなどの兵士が身に付けている物。
『兵器』は銃火器に分類されない物で、装甲車やヘリ、戦車や艦艇などがこれに該当している。
『その他』は、それ以外の3つにも属さない物。応急処置用のエイドキットやレーション、テント何かがこれに分類されている。
私は試しに、銃火器のタブを指先でタッチした。するとウィンドウが切り替わり、更に無数のタブが現れた。
『ハンドガン』、『サブマシンガン』、『PDW』、『アサルトライフル』、『ライフル』、『バトルライフル』、『ショットガン』、『マシンガン』、『スナイパーライフル』、『アンチマテリアルライフル』、『グレネードランチャー』、『バズーカ』。
様々なタブにつけられた名前に、銃好きとしては心が躍った。ただのエアガンしか触った事の無い私が、誰に咎められる事も無く、本物の銃に触れるんだと思うと、興奮で心臓が早鐘を打つ。
試しにハンドガンのタブを指先でタッチする。すると三度ウィンドウが切り替わり、そこに映し出されたのは幾多のハンドガンたちだったっ。
「ッ!本物の、銃……ッ!」
エアガンじゃない。本物の銃の写真がいくつも並んでいた。その現実に興奮しながらも指先でスクロールバーを操作しながら、並んだハンドガンたちを吟味していく。M1911A1、グロック18といった王道からドイツのH&K P7と言ったマニアックな銃まで。更には最新式のシグザウアーP320から西部劇時代のコルトシングルアクションアーミーまであるっ!
あぁ、最新鋭の物から銃器の歴史を形作って来たレジェンドたちまでっ!凄い凄いっ!メジャーやマイナーも問わずっ、色んな銃が全部買えるっ!
しかも、女神様によって最初のこの1回の買い物だけは全部無料ッ!ハンドガンだけでも目移りしちゃうっ!あぁでも、サブマシンガンやアサルトライフルも捨てがたいっ!
「あっ!こっちはMP5やMP7ッ!あぁこっちはイスラエルのタボールシリーズッ!あぁもう迷う~♪」
興奮が抑えきれないッ!どれも欲しいっ!どれも試し撃ちしたいっ!エアガンじゃない本物の銃に触るなんて日本じゃ夢のまた夢ッ!あぁ色んな銃器が私を誘惑してくるみたいっ!どれも魅力的ッ!どれも触ってみたいっ!
「あぁもうどうしようっ!」
早く決めないとっ!決めて町に行かないとっ!でも決められないっ!だってどれも素晴らしい銃ばかりだからっ!
『ガササッ!』
「っ!?」
けれど、突然聞こえた音にビクッと体が震え、私は思わず振り返ったっ!見ると、近くの森から何匹も鳥が飛び立っていくのが見えた。
「び、びっくりしたぁ」
突然の事に心臓が止まるか?と思うほど体が震えた。
「……まぁけど」
思わぬ事で心臓が跳ね、けれどおかげで冷静さを取り戻す事が出来た。目の前の事に夢中になるあまり、周りの事が見えていなかった。これじゃあだめだ。私は気を引き締める意味で、一度深呼吸をした。
「思い出さないと。女神様に教えられたこの世界の事を」
改めて女神様より事前に頭にインプットされていた、この世界の概要を思い返しつつ、その場から立ちあがって、木の幹に手を置きながら周囲を見回す。
女神様より教えられた情報によれば、この世界そのものの文明レベルは私の前世の世界の過去、中世ヨーロッパのそれに近いとの事。ただし異世界だけあって、差異もある。その差異、というのが『魔法』や『亜人』、そして『魔物』の存在。
魔法とは、私が知るファンタジーアニメなどでお馴染みの存在。それがこの世界にもあって、この世界では人の内にある生命力、魔力を消費して行使する超常の力、という認識らしい。
それともう一つの亜人は、これもまたファンタジーアニメなどで定番のエルフやドワーフ、獣人、魔族と言った人の形をしていながらも人と異なる存在。この世界にはそんな亜人と私のような普通の人間が暮らしている。
そして最後が、魔物。これもまたファンタジーゲームでド定番の敵キャラクターと似たような存在らしい。あらゆる生物を敵とみなし襲い掛かって来る人型種族共通の敵、らしい。
これらの情報を踏まえた上で今の私に必要なのは何かを考える。
今の私の最優先目標は、遠目に見えるあの町らしい場所まで行く事。それも日が暮れる前よりも先に。そうなると必要なのは、戦える道具。女神様から与えられた情報の通りなら、魔物の中で最も数が多いとされるのがゴブリン。ゴブリンは数が多く、どこにでもいる可能性があるらしい。それならこれから私が通過する森の中にゴブリンが居て、それと遭遇する可能性がある。そうなれば、戦闘も……。
「ッ!」
戦闘、というワードからついさっき死んだ恐怖がぶり返してくる。呼吸が乱れ、手が震える。……でも、ここに留まった所で安全という保障も無い。それに夜になれば狼やイノシシ、果ては熊と言った野生動物さえも敵になる。
「……戦うのは怖いけど、でも戦わないと生きられない、よね」
戦闘経験は皆無。銃だって握った事があるのは玩具が精々。それでもこの世界には警察なんて居ない。ここから助けを呼ぶ手段も無い。今私の身を守れるのは自分だけ。
こうなったら、やるしかないっ。両掌で頬を『パンッ』と叩いて気合を入れる。怯えてたって始まらない。立ち止まってたって始まらない。とにかく今は眼下の森を抜けないと。でなければきっと私は、今日という日を乗り越えられないかもしれない。冗談じゃないわよ。ついさっき死んで、そのまますぐ死んでたまるもんですかっ!あの時とはもう違うんだからっ!
生きてやる。リセットされるのが嫌で転生したんだからっ。『私』は、生きてやるっ!この世界で生き抜いてやるっ!
もう過去には戻れない。愛した家族の元へも戻れない。住み慣れた家にも帰れない。帰り道は無い。あるのはただ、前に進む道だけ。
そう思うと、不安と後悔で涙があふれた。ごめんね、お父さん。お母さん。こんな親不孝な娘を、どうか許してください。
それから私は、少しだけ涙を流した。心の中にある不安と後悔を洗い流すように。
~~~~~~
「さて、そうなるとまずは装備を吟味しないと」
少しだけ泣いて、涙をぬぐい気持ちを切り替えた後。私は再び木陰に座り込み、スキルのウィンドウと向き合った。とりあえずまずは装備を整えないと。森を抜けるとはいえ、戦闘の可能性がある以上装備が必要そうだし。という事で個人装具のタブをタッチしてリストを呼び出す。
服は、何か転生したら安っぽい服に着替えてたんだけど、これがこの世界の標準的な服なのかな?まぁいいや。迷彩服は市街地じゃ目立つしパス。ここは私服の上にリグとかを身に付けるしかないかな。
「何か良いのは~。っと」
スクロールバーを操作していてある事を思い出した。
「あっ、そういやボディアーマーに小物を入れたりできるプレートキャリアってのがあったっけ?あぁこれだこれ」
ふとある物を思い出し探してみると、見つけた。
プレートキャリアは、言うなれば防弾ベストにマガジンなどを入れる機能を併せ持った装備。流石に防弾ベストを着て、その上にマガジンなどを入れたタクティカルベストを着るとなると、重さに私が耐えられない恐れもあるから、とりあえず標準的なプレートキャリアを選択してスキル内部のカートに入れる。
「他に必要なのは、え~っと」
それと荷物を入れるリュック式のバックパックも一つ。今は入れる荷物は無いけど念のためにね。それに軍用のダークグリーンに塗装されたヘルメットを一つ追加。あぁそれと目元を守るためのゴーグルも一つ。それに銃声などから耳を守る目的の電池式ヘッドセット。それ用の電池も親切にヘッドセットのページに乗ってたのでポチっと。それに膝や肘を保護するプロテクター。足にもコンバットブーツを。それと防刃加工が施され、手の甲にプロテクトバッドが入ったコンバットグローブも。あぁ後、念のためにサバイバルナイフや治療用の道具、レーションや飲料水入りのペットボトル、あとは役に立ちそうな物なんかも次々とカートに入れてっと。
とにかく必要と思えるものをとりあえずカートに入れていく。よし。これを買って装備すれば一応軍人『らしい』恰好は出来る。まぁ本物の兵士はもっと色々装備するんだろうけど。まぁ今はそれは良い。慣れない森歩きになるし、出来るだけ装備は軽くしたい。
さて、それじゃあ次は肝心の銃に関してなんだけど……。
「どれにしようかな?」
目の前の銃のタブとにらめっこしながら、思わず独り言が零れた。
銃というのは用途などによって千差万別、様々な物がある。もちろん、これから森を抜けるに当たってある程度は候補を絞ってある。
森という視界の悪い場所では不意の遭遇戦がありそう。そうなると、咄嗟に狙いを定めやすい、小型で取り回しの良い銃が望ましい。この条件に合致するのは、ハンドガン、サブマシンガン、PDW、或いはそれらより少し大きいカービン銃。
今の所持つ予定の銃は2丁。一つを戦闘で主に使うメインの武器。もう一つはメインの武器が壊れた時などようにサブの武器。サブの武器はとりあえずハンドガンにするとして、そうなると問題はメインの武器なんだけど。
「って、ある程度絞ったとはいえ。弾の事も考えないとねぇ」
ウィンドウを見つつため息が漏れた。私の持つスキルは、銃や兵器を『買う』能力。無制限に呼び出せるわけじゃない。今回は初回特典で無料、って感じになっているとはいえ、銃弾は消耗品だし銃本体も壊れたら買い替えないといけない。
仮に何かしらの収入源が出来たとしても、銃弾が高ければそれだけで手持ちが無くなる恐れがある。となると、まずは出来るだけ安い銃弾を使う銃が良い。
一応、銃や銃弾の値段には違いがある。例えば銃は古かったりする物ほど安く、逆に最新鋭の銃ほど値段が高い。安い物もあれば高い物もある。
でもまだ条件はある。私は銃火器に関してはド素人、なんだよねぇ。こうなると反動の強い銃は扱いきれる自信が無い。多少練習をここでしたとしても、いきなり実戦で熟練の兵士の人たちみたいに当てる事は絶対無理だと思うし。
で、それらの条件をまとめると……。
1、素人の私でも扱いやすく、女性の私でも持てる出来るだけ軽量な銃。
2、今後の弾の購入や壊れた後の再購入なども考えて出来るだけ安い弾と銃。
3、近距離での戦闘に向いていて取り回しの良い銃。
4、戦闘時に
5、上の4つに合致するサブマシンガンやPDWの銃。
この5つの条件が揃っている銃が最適なんだけど。……そんな都合の良い銃なんてあるかなぁっ!?私の銃に関する知識が正しければ、理想的なのは小口径の銃弾を使うサブマシンガンなんだけど……。
「何か良いサブマシンガン無いかなぁ」
良いのが無いかなぁ?とため息交じりにサブマシンガンのタブをタッチして一覧を表示。スクロールしていく。
「ん?」
その時、ふとあるサブマシンガンが目に映った。
「『M3サブマシンガン』?」
その銃には見覚えがあった。M3サブマシンガン、通称『グリースガン』。第2次世界大戦の最中、アメリカ軍によって開発されたサブマシンガンか。
「グリースガンかぁ。名前とかは知ってたけど、これ使えるのかなぁ?」
名前は知っていたし有名な銃だったけど、確かグリースガンって生産性最優先の銃だったような?そう考えると信頼性が低い可能性も。そうなると使う気にはなれなかった。
「ん?」
どうしようか、と思い首をひねっていると、銃の写真の脇に、半透明の虫眼鏡のマークを見つけた。何だろう?と思いつつそれを指先でタッチした。すると、画面が切り替わり、何と音声無しでグリースガンの射撃動作を教えてくれる映像が流れ出したっ!
「すごっ!?んっ?」
更に映像の下には文字列が現れた。……これって、グリースガンの説明?え~っと何々?
「≪M3サブマシンガン、通称グリースガンは当時米軍の主力サブマシンガンであったトンプソン・サブマシンガン、通称トミーガンの後継装備として開発された。製造コストが高く生産性も他国のサブマシンガンに比べて低かったトミーガンの後継兵器として開発された本銃は、コストを抑えると同時にシンプルな構造ゆえに高い信頼性を確保。トミーガンと比較した場合の発射レートは低いが、逆にそれが射撃中のリコイルコントロールを容易にし、取り回しも容易であった事から前線の兵士たちからも高い評価を得ていた。1944年にはいくつかの欠点を解消した改良型のM3A1が開発された≫、と」
へ~。そうなんだ。……って関心してる場合じゃないかっ!いやでも、これいいじゃんグリースガンッ!価格も現代のサブマシンガンに比べれば大分安いっ!弾の.45ACP弾もそこまで高くないしっ!よしっ!じゃあ当面のメイン武器はグリースガンで決定ッ!早速グリースガン(M3A1モデル)をカートに入れて、無料だしとりあえず.45ACP弾を150、いや200発ほどっ!それと30発入る箱型マガジンを6本ッ!よし、これでメインはOKッ!
さて、最後のサブ武器はどうするかなぁ?メインは決まったし、サブはあくまでも最後の手段、自衛のための銃だし。積極的に使う物でもないし、携行性を重視したい。となると当然ハンドガンしか無いんだけど、ここでも問題になってくるのはジャムの可能性を出来るだけ低くしたい信頼性の問題と、素人の私が使える物かどうかという問題。
信頼性、もとい動作の確実性を考えるのなら、リボルバーしかない。リボルバーはレンコンのような形の
ただしリボルバーにも欠点はある。装弾数が多くとも8発程度な事。弾倉の弾を撃ち切ったら、リロードの際にそれ用の道具、スピードローダーなどが無いと手で弾を入れなければならず、時間が掛かる事などなど。
リロードを考えるのならオートマチック式のハンドガンが良いけど、確実に動作する事を考えるならリボルバーの方が良い。悩ましいんだなぁこれが。
銃もそれぞれ一長一短がある。そうなると何を優先するかになるけど……。
「う~ん」
悩ましい。リロードに優れるオートマチックか。動作の確実性のリボルバーか。しばし、しばし悩んだ末。
「よしっ、リボルバーにしようっ!」
サブ武器はリボルバーに決めた。そんでもって何を選んだのかというと、アメリカの
まずはM34をカートに入れて、更に.22LR弾を約30発分、それと足に装備するホルスターもカートに入れ、右上の『決済へ』というボタンを押した。
次の瞬間、タブが切り替わり、私がカートに入れたものがずら~っと縦一列に並んでいる。それを確認しながらスクロールしていくと、合計金額の欄が出てくる。もちろん初回だから0円って事になってる。あとはその下にある決済完了の文字を押せばOK。そのボタンをタッチする。
≪警告。以降の物品の購入には料金が発生します。初回の購入物品はこれだけでよろしいですか?≫
「ッ」
表示された警告文に思わず息を飲んだ。そしてその文字列の下にある『はい』と『いいえ』の文字。『はい』を押してしまえば、現金を持たない私にこれ以上装備を買う事は出来ない。かといって、いいえを押してまた買い物を続けるのも難しい。日の入りの正確な時間が分からない以上、これ以上ここで時間を潰している訳にも行かない。
「……ふぅ、ハァ」
一度深呼吸をする。もう、時間が無い。早く装備を身に付けて出発しないと。もう、迷っている暇はないっ!ここまで来たら後は覚悟を決めるしかないっ!だからっ!
「えいっ!」
とうとう覚悟を決めて『はい』のボタンを力強くタッチする。
≪承認を確認。決済完了。装備の召喚を開始します≫
その文章が現れると、私の正面に白い魔法陣が現れ、そこから無数のアイテムたちが下からせりあがって来るように次々と出現した。終いにはこんもりと大量の物資が集まって小さな山が出来ていた。
「はは、これを今からかぁ」
目の前の物資の量に、思わず苦笑いが漏れる。
「って、驚いてる場合じゃないないっ!」
しかしすぐに頭を被り振る。そしてもう一度気合を入れるために、両手で頬を叩いた。
「ぃよしっ!やるぞっ!」
タイムリミットは迫ってる。もう1分1秒だって無駄には出来なかった。
それから私は、とりあえず今必要では無いものを召喚したリュックに詰め込んだ。
お次はマガジンへの弾込め。とりあえずグリースガンのマガジン4本に弾を込めた。これで120発、森を抜けるのには十分だろうけど……。
「あぁっ!指イッタッ!」
マガジンのバネが強力で、弾を込めるのも一苦労だったっ!でもぼやいてる場合じゃないっ!次ッ!次はプレートキャリアの中に防弾用のプレートをセットし、正面のマガジンポーチ3つにグリースガンのマガジン3本をセット。それとキャリアに付属していたポーチにM34の予備の弾を20発ほど入れておく。
次に肘や膝などを保護するパッドを装備。コンバットグローブとコンバットブーツを身に付け、目を守るゴーグルを装備。電池を入れたヘッドセットを被りヘルメットも被る。ベルトと一体型のホルスターを腰の辺りに装備して、慣れない手つきで6発の弾を装填したM34を収める。
そしてプレートキャリアを装備する。うっ、やっぱ色々装備すると重っ。でもこれも必要だから仕方ないっ!更にリュックも背負うと更に重くなったっ!でも本物の軍人さんってこれ以上重いの背負って走ったりしてるんだもんなぁっ。そう考えるとホント凄い。
これで後は、と視線を巡らせると。残っていたのはグリースガンだけだった。……準備している時は忙しくて意識しなかったけど、これは、『本物の銃』なんだ。誰かを殺せるだけの殺傷力を持った『本物の兵器』。
そう思うと、反射的に『ゴクリッ』と固唾を飲んでしまう。ついさっきまではどれも試射してみたい、どれも触ってみたいとかはしゃいでいたけれど、いざ実物を前にすると、えもいわれぬ緊張感がある。
いや、それでも今はこれが私の武器。これが私の身を守る全てなんだっ。緊張感を振り払い、グリースガンを掴み取り、右手でグリップを握り、左手でマガジンの辺りを支える。
『重い』。それが最初に感じた事だった。ただ単に重いんじゃない。グリースガンが4キロ近くあるから無理も無いけれど。それ以上に『武器の重さ』が手に伸し掛かる。
「今後、この重さになれていくしかないのかぁ。想像できないなぁ」
これからこの重さに慣れていくしかない、と分かっていてもそんな未来は想像できなかった。
その時、風が吹いて私の肌を撫でた。枝葉が揺れ音が聞こえる。鳥のさえずりが聞こえる。目の前に広がるのは、コンクリートジャングルの都市では見る事の出来ない自然あふれる世界。
そしてそこには、私を簡単に殺せてしまう脅威もまた、存在している。それに立ち向かうには、この銃を使って戦い、生き延びていくしかないのだから。
「……生き残ってやる。絶対に」
例えこの世界がどれだけ過酷でも、絶対に生き残る。そんな誓いを胸に私は歩き出し、丘を下って行く。
そうして、私の旅は始まった。
第2話 END
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます