第18話 お股についてるそれって何?
露天風呂の手前にある脱衣所で服を脱ぐのだけれど、どうしてもこのままアスモちゃんと一緒にお風呂に入っていいのか迷っていた。
本人が良いというのだから問題は無いと思うのだけど、それとは別に倫理的な問題があるような気もしていた。
銭湯だって小さな子供もちゃんと男女別れて入るような時代なのにもかかわらず、こうして若い男女が一緒にお風呂に入ろうとするのはいいのだろうか。恋人同士ならありなのかもしれないけれど、俺とアスモちゃんはそういう関係ではない。
隣とはいえ、同じ部屋で一緒に寝るというのもどうかと思うのだが。
乗り気ではない俺と対照的にアスモちゃんはノリノリで服を脱いでいるのだが、服の上からでもアスモちゃんの体が細いという事は分かっていた。
実際に服を脱いでるところを見るとハッキリとわかるのだが、触っただけで簡単に折れてしまいそうなくらい細く白い体をしていた。
あまりにも痩せているからなのか、アスモちゃんは胸の膨らみがほとんどない。
ずっと自分の事を男の子だ男の子だと言っていたのも本当だったのかもしれない。そう思うくらいに胸はフラットな状態になっていた。
見た目が可愛く白髪も綺麗なアスモちゃんは、見た目だけだと完全に女の子なのだ。
でも、本当は男の子だというのも秘密事項なのかもしれない。
「露天風呂って初めて見たんだけど、外からは見えないようになってるみたいだな。偵察用に飛ばしている使い魔の映像だとただの壁になってるし、誰かに見られる心配はないみたいだよ。ねえ、寒いから先にお風呂に入ってていいかな?」
「軽くかけ湯をしてから入りなさい。個室露天風呂だからって、マナーはしっかり守ろうね」
マナーを守ろうと言いつつも、この世界でも俺のいた世界と同じようなマナーがあるのかは確認していない。
それでも、アスモちゃんが俺のいう事に従ってくれるようなので、この世界にも戦闘や温泉のマナーというものがあるという事が判明したのだ。
こうして黙っていても何も終わらないし、さっさとアスモちゃんの頭を洗ってあげることにしよう。
アスモちゃんが満足してくれたら、俺はあっちにある普通のお風呂に入ってゆっくりしよう。
そうしよう。
俺は脱いだ服を脱衣カゴ入れたのだが、アスモちゃんが脱ぎ散らかした服も脱衣カゴに入れておいてあげよう。
こうしておけば、次にこんな機会があった時にアスモちゃんが恥をかかなくて済むだろう。そういう優しい気持ちで俺はアスモちゃんが来ていた服を綺麗に畳んであげているのだ。
そんな中、俺はアスモちゃんの脱ぎ散らかした衣服の中に見慣れない物体を発見してしまった。
メイド服も見慣れているわけではないのでどう畳めばいいのかわからないが、それとは別に全く見たことが無いモノが置いてあった。
どこからどう見ても、女児向けのおパンツがメイド服と一緒に置いてあったのだ。
アスモちゃんのフラットな胸を見てから、アスモちゃんは自分で言っていた通り本当は男なのだと思っていたのだが、この女児向けおパンツを発見した時点で男の子だという可能性が低くなっているような気がする。ただの状況証拠でしかないと言われればそれまでなのだが、アスモちゃんが本当に女の子だという確率はかなり高くなっているはずだ。
俺は、アスモちゃんが穿いていたおパンツをあまりじっくり見るのも良くないと思い、そっとメイド服の下に置いて見えないように隠したのだ。
この部屋には俺とアスモちゃんしかいないので隠す必要も無いと言えばないのだけれど、何となく人に見られてはいけないものだと思ってしまって隠していたのだ。
「ねえ、まだお風呂に来ないの?」
「今から行くよ。そんなに慌てなくても大丈夫だよ」
「慌ててなんていないよ。こんなに気持ちいいお風呂は初めてだから、“まーくん”にも早く体験して欲しいなって思っただけだからね」
アスモちゃんは外の景色を見るためこちらに背を向ける格好になっているのだが、しっかりと纏められている髪が少しだけ濡れてしっとりとしているのがわかった。
髪質は女の子っぽいのだけれど、アスモちゃんが本当に女の子なのか疑心暗鬼になっていた。どっちでもいいような気もするのだけれど、アスモちゃんが本当に女の子だったとしたら、俺の今の状況は非常にまずいことになると思う。
それでも、アスモちゃんは俺に隣に来るように言ってきた。
俺も軽くかけ湯をして湯船につかったのだが、確かにこれは気持ちい。
先ほどよりも気温が下がっていることも影響しているのだろうが、このまま湯船から肩を出していれば永遠に入っていられそうなくらい快適な空間になっていた。
それにしても、隣にいるアスモちゃんがやたらと俺の事を見ているような気がする。
顔をアスモちゃん側に向けると真っすぐに前を見ているように演じているのだが、俺が正面を向いている時は俺の事をジッと見つめていた。
お風呂のお湯に反射しているからごまかしたって無駄なのに、アスモちゃんは律儀な人なのかもしれない。
「ねえ、オレも一つ気になったことがあるんで聞いてもいいかな?」
「俺に答えられる範囲でいいならどうぞ」
「“まーくん”のお股についてるそれって何?」
何と答えればいいのかわからなくて固まってしまっていたが、動ない俺を心配してアスモちゃんは肩をゆすったりしてくれていたのだ。
立ち上がったアスモちゃんを見て違和感があったのだが、しばらくしてからその違和感の正体に気付いてしまった。
アスモちゃんが本当に男の子だとしたら、本来そこにあるべきものが何もなかった。
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