読んでいると、青春時代の気持ちをありありと思い起こさせられました。
主人公は同級生の白瀬恋由莉のことを気にかけていた。でも、白瀬には付き合っている男もおり、なんといっても「高嶺の花」。だから、本気で付き合いたいとか、「好き」という気持ちを持つまでには至っていなかった。
あくまでも目の保養。いわゆる「推し」というくらいの感覚だけを抱いていた。
本作では男子高校生の恋愛観というのが非常にリアルに描かれています。
「ものすごく好きな誰かがいて、その子と付き合いたい」という風に思う人間は稀。「とりあえず彼女が欲しい」というのが本音。
付き合えそうな女子を何人か見繕って、その中で一番良さそうな子を選ぶ、というもの。
これがおそらくは大多数の感覚でしょう。自分に好意を寄せてくれる子が結構好みな感じだったら、その子で決まり、という。無理して学校一の美少女を狙う、という労力を傾けようという気概を持とうと思わない。
主人公もそんな一人だった。でも、「ある時」をきっかけにそれが変化する。
この機微の描き方がとても繊細で、「推したい」が「好き」に変わり、行動しようと決意するに至る感じに強い共感性が生まれていました。
楽に幸せを得られる選択ではなく、一歩踏み出していこうという気持ち。そこには間違いなく「勇気」という言葉がある。
全力で応援したくなる、素敵な青春小説でした。