第7話
その建造物は古い民家だった。しかし人が居るような気配はない。その点においては、
「やっぱりここ、私の家だ」
「……そっか、よかっ、た─────」
なんの前触れもなく、柔らかな笑みを浮かべたまま
振り向き、彼女が倒れていた事に気付いた瞬間、
「…………少し、疲れた……だけ。大丈夫」
「大丈夫には見えないわよ! それにその傷、いつから開いてたの?!」
見れば、塞がっていた筈の傷口が開いていた。それでも彼女は大丈夫だと答え続けている。しかしそれは誰の目から見ても嘘だとわかるものだ。
「どうすればいい? どうしたら貴女は元気になるの、
所以は解らぬが、
「
「…………なに?」
「お姉ちゃんの、帰る場所。残ってて、よかったね」
「……っ、……うん。ありがとう」
「私ね。
一つ言葉を紡ぐ度、彼女の声は小さくなっていく。それは
「雪女の、血筋……お姉ちゃんが、こう……なった、原因をね。私、盗っちゃった」
「それは、どういう……こと……?」
彼女には多くを語るだけの時間がない事を
それを後悔した時にはもう遅い。
──
また本来であれば、その欠片は一つずつ回収し、一つずつ仮称『天華』へと還すべきものであったらしい。
しかし彼女は此処に来るまでソレを思い出せず、たった一人で溜め込んでしまった。なので此処へ帰って来た時点で、相当な無理をしていたらしい。けれど、彼女はそれで良いと考えていたと言うのだ。
「な、なら! 今からでも良いから、私にソレを────!」
──返して。そう伝えようとした
「…………あのね、あまなおねえちゃん。れんかおねえちゃんも、みかおねえちゃんも、かいおねえちゃんも、かえんおねえちゃんも、みんな、だれかのために、がんばって、いたんだ」
続く言葉にはもう、活力のようなものは殆ど感じ取れなくなっている。だから
「だから、わたしも……だれかの、やくに……たちたいなぁ、って、おもったの」
ゆっくりと、彼女の瞼が閉じていく。それに伴い呼吸も長く、深いものへと変わっていった。どうすることも出来ない終わりを前に、
「ながい、ふゆ──は、おしまい……またね、おねえ……ちゃ──ん──」
それが、最期の言葉だった。
事切れた瞬間に、
天華 メイルストロム @siranui999
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