モノマネ童話集
尾藤みそぎ
第1話 桃太郎 冒頭 〇〇先生風味
むかし、むかし、現代にはおよそ、歴史的資料の類が一切残っていないと断言できるほどの、遠いむかしの話である。
当然と言えば、当然のことであるのだが、電子機器などという文明の利器が、影も形も存在していない当時の暮らしにおいて、洗濯というのは大変な重労働であった。
とはいえ、洗濯は家事。ルーチンワーク。いわば日常的責務なのであるから、避けることができないのもまた、当然であることは言うまでもない。
当然で、必然の営みに過ぎない。
ある日、あるところに住んでいるおばあさんが、あるところに流れている川へ、洗濯に訪れたのもまた、至極当たり前の、いつもの光景なのであった。
そんな日常的責務が、非日常的怪夢へと様相を変えたのは、おばあさんが川上へと視線を向けた時だった。
桃。
一言で形容するなら桃としか言いようがない。が、名状しがたいそれは、大の大人でも抱えられるかどうか、まったくもって判断がつかないほどの威容を誇っていた。
どんぶらこ、どんぶらこと異音を響かせながら、その巨大すぎる桃は、まるで意志を持っているかのように、おばあさんを目掛けているかのように、川を流れてきたのである。
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