第2話 旅立ちは成人をだいぶ過ぎてから

 ここからのお話は先ほどのオーク退治から数か月前に戻る。

この作品はよくある。ファンタジー的な世界で行われる。ちょっと変な関係の生きるものたちのお話である。

 かつて、この地には世界を救った勇者と呼ばれた人物がいた。しかし、時も流れて100年の歳月が経過したころ、一軒家の評価に困るぐらいのレベルの家で、青年と少女による口論が行なわれていた。


「なぁ、頼むよ俺一人で旅に出ていいだろう?」


「いやダメじゃ。それはお前のお母さんが許しても私が許さん」


 どうやら青年は一人旅に出かけたいようだったが、それに、少女は反対しているようであった。しかし、両者は非常に似た外見的特徴を持っていた。

 お互いに銀色の髪をもち、歳は青年の方が若干高そうではあるが、それでも1,2歳差といったところだろう。知らぬ者が見れば兄妹に見えるだろう。しかし、彼らの関係はけっして兄妹などいうものではなかった


「だから!おばあちゃん!俺ももう20だ!流石に独り立ちくらいさせてくれよ!いつまでも実家暮らしってわけにもいかないじゃないか!」


 そう。この二人の関係は祖母と孫なのである。


「馬鹿を言え!もう20とはなんだ!まだ20じゃろう!」


 少女の名前はカンナといい、そして20の若造はサクラという。無論。20を超えたことを「まだ」というのは、彼女、カンナの種族に理由がある。


「そりゃぁ、エルフのおばあちゃんから見れば俺なんてまだまだひよっこかもしれないけどよぉ…」


 彼女の種族、エルフというのは森などにすみ、精霊の類と考えられ、細く先の尖った耳に人を遥かに凌ぐ寿命をもつものたちとのされている。


「親からみれば子どもはいつまでも経っても子どもなのじゃよ。うん。」


「そもそも今の目線は祖母じゃん。300歳越えのおばあちゃんからすれ人間みんなベビーになっちまう。」


 しかし、サクラがここまで旅にこだわる理由というのが、一つある。


「いい加減、村から出てもいいだろう?こんな閉鎖空間に何十年もいられないよ」


 彼女、エルフの時間間隔というのは非常にルーズ。約束を期間などを数十年単位で結ぶのはざらであり、一つの場所は仕事などに何百年も付かされても文句を言わないこともある。彼女からすれば数十年なぞ、我々の感覚でいうところの一年にも満たないのかもしれない。


「お前のお母さんもここを出ていくとき、同じ事を言ってたよ。全く!経った50年ぽっちで外に出ていくなんて、むちゃな事をする……。」


 彼女はぷんすこ怒りながら言ってはいるが、サクラからしてみれば、50年ものあいだこんな辺鄙ド田舎の村に縛り付けられていた母が可哀想に見えた。


(しかし。もとより察してはいたが、ここまで時間への価値観が違ってくるとは。)


 サクラも伊達に20年共にくらしてきた、だからこそ、この問題はどうにかしなくてはならない。そしてここからどうするかなど、当の昔に決めていた。

 青年は両手はテーブルにつけ、頭を下げて、頼み込む。


「頼むよおばあちゃん!俺はじいちゃんの剣技もおばあちゃんの魔法も上手くできなかったけど、自分のできる分野で頑張ってきた!だからこそ広い世界で自分がどこまでやっていけるのか確かめたいんだよ!」


 母さんは出ていくとき、おばあちゃんと本気の殺し合いの末に勝ってここを出ていったらしい。しかし、俺はそんな真似はできない。まず、おばあちゃんと殺し合いなんてしたくないし、もしそんな事になっても多分ボロ負けする。そうなればもう二度とここを出ていけなくなる。


「そんな……卑怯だぞ!頭をあげろぉー!」


 実を言うとおばちゃんは俺に対して結構甘い。村を出ていく以外の事なら、しっかり頼み込めば意外と聞いてくれるのだ。


「おばちゃん。俺は井の中の蛙のままでいるのはごめんだ!頼む!」


 すると、おばあちゃんは「はぁ……」とため息を一つはいた後、すこし考えるような、すぐさの後に、「……しゃあないのう…許可する。」

 なんと、ばあちゃんの許しを得ることに成功したのだ!サクラも言ってはいたもののまさか本当に許しを得るのは思っておらず、内心かなり驚いていた。


「ただし!条件がある!」


 まぁ、そう上手くも行くはずもなく、おばあちゃんは条件を付けると言い出した。だが、最悪土下座をしてでも出ていこうとしていたサクラからすれば、ある程度の条件ならば飲み込める。


「条件って?」


「コホン。条件は一つ。サクラの旅のパーティーにこのわし【魔法使い】カンナを入れることです。」


 要するにおばあちゃん同行ということである。サクラからしてもこれは予想外。


「……マジで?」


「大マジに決まっとるじゃろう!文句は言わせんぞ!」


 彼女。カンナのイメージはこうだ。

『おばあちゃんのカンナ。』

『魔法使いのカンナ。』

 サクラからしてみればいつも目に映る姿は前者であるが、彼女のことを知るものからすれば、きっと後者としての方が有名であろう。


「昔は魔法使いとして、あいつとブイブイ言わせとったんじゃ。採用価値は中々じゃぞ?どうじゃ?」


 今だにこの人は衰えを知らない。ここ最近もなにやら新しい魔法の杖の設計図を知り合いの魔法使いの所にもってってなにやら作っていた。


「悪いが、腕は鈍っちゃいないさ、お荷物にはならないよ。それにわしも確認したいことが山ほどあるからね。まぁ、規模のでかいお使いだよ!」


 魔法の腕は文句なし。悔しが、それを一番知っているのは本人以上によく見てきた身内の自分自身が一番よく知っている。見た目も詳しくないやつが見ればまだ、十代後半の美少女に見えるだろう。それに、生きた時間が違いすぎる。彼女の経験から語らせれば、どんな書物よりも説得力をもつ。聞く人によっては彼女の話に涙を流すことだろう。

「だー!もうしゃぁない!わかった!一緒に行くよ!」


「よし!決まりじゃぁ!」


 サクラ。彼が心のなかで思っていたことはたった。一言であった。

(どこに、おばあちゃんと一緒のパーティーで旅をする奴がいるんだ。)

 


 




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