第12話 淡々とすぎる時間~古河真~
よう。俺は古河真、今は学校が終わって友人たちと帰ってるところだ。今日も早く終わったし、駅前でラーメン食ってから解散だってさ。今日は俺としては珍しく財布持って学校来たけど、なんか全員分払えって言われた。ちょっと酷いよなあ、いつもの2人と後で合流する中田を合わせて4人分か。足りるか微妙だな。翔平の奴「俺は半年前から借金あんだぞ?」とか言ってるけど、そんな前のこと覚えてねえよ。
しかし、高校デビューしてやろうと思ったけど、地元の公立じゃ無理だよな。ロン毛の翔平とかは「髪の長さは少なくとも言われねーんだろ?中学よりマシじゃん」とか言ってるけど、俺からしたら髪染められない、ピアス禁止の時点で論外の校則。環境が変わるんなら、それに合わせて見た目もかっこよくしないと。まあそんな感じの場所なもんで、今日もこいつら以外からは誰にも話しかけられなかった。強いて会話した人でいえば前の席の久保。早々に話せる人増えてよかったけど、どうしても翔平の友達って認識されてる感が否めないんだよなあ。何?自分から話しかけろ?そんなタイミング早々ないし、そこまでリスク追う気もないよなあ。俺はいつでもウェルカムだってのに。
「それにしても、結構退屈だったなー今日」
「そうか?委員会決めとか面白かったじゃん」「そうそう、俺は大分今後が想像できるようになったぞ?」
進んで委員会を選んだ佑都と翔平は口々にこう返してきた。本が好きな佑都は迷わず図書委員を選択し、翔平は高倍率の放送委員に当選。何でも自作の曲を校内放送で流すのが夢らしい。俺はというと、特に興味がなかったのでぼーっとしていた結果、保健委員に抜擢された。結構仕事多そうだけど、相方の奴は真面目そうだし俺は程々でいいや。やる前は人付き合いを増やすチャンスかなーと思ってたけど、ふたを開けたらやりたいことが特になかったというのが正直な感想だ。
まあでも、この後の学年集会はこいつら2人もつまらなかったらしい。そりゃそうだ。入学2日目だってのに、いきなり自分の将来がどうだの受験がどうだのって…。しかもこの学校、御託並べてる割に治安がすこぶる悪いらしい。実際今日も「ちゃんと話聞けて偉い!」とか言われたし。なんなら俺らの一個上の代は全入だったらしいが、入学から一か月も経たずに盗撮して退学になったやつがいるとか。てか俺らも一人しか落ちた奴いないらしい。理科6点の奴が受かる高校にどうやったら落ちんだよ。
そんなことを考えているうちに駅前のラーメン屋についた。中田は自分で払ってくれるらしい。いいやつだなあ。俺は一番大きいサイズの豚骨ラーメンと、餃子に唐揚げ、ついでにご飯大盛り!どうせこいつらの分も俺が払うんだし盛大に頼んでやるよ。因みに中田は味噌、翔平は塩、佑都は醤油を頼んだ。そんな食えんのかって?何言ってんだ、こんぐらい朝飯前だよ。そのせいか微妙に丸い体格なもんで、こいつらから付けられたあだ名はクマ。かわいいなあ、俺にぴったりだ。どうせならパンダがよかったけど。
あーあ、今日も終わりかあ
3人分を払い懐に慣れない寒さを感じながら、あいつらと分かれて独り家路につく。結局こうしてなんでもない時間が淡々と流れていく。帰ったら昼寝して時計を少しでも進めよう。明日は確か部活動説明会が1日かけてあるらしい。そこでようやく俺にふさわしい出会いがある。そう言い聞かせながら足を進めた。
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