第7話 最高の船出〜青島佑都〜

 僕の名前は青島佑都。今日から高校生になったネギ星のプリンスさ。え?高校生になってその自称は流石にイタいだろって?まあでも、色白よりで背は高くてちょっと面長、おまけに苗字に青が入ってるせいで小学校の友人二人からはずっとネギってあだ名付けられてたからな。最初はむかついたが、今は自分でこういってるくらいには慣れっこだ。最もあだ名付けた張本人の今井が引き気味なのはそれはそれで腹が立つけど。


 今は入学式が終わり、新しくできた友達と一緒に駅前のカラオケに来ているところだ。ちょうど受付が終わり、全員がドリンクを入れて戻ってきている。さて、今日は何を歌おうか。そんなことを考えながらスマホのライブラリを見始める。すると、無精ひげをさすりながら古河が話しかけてきた。採点バトルの挑戦状だろうか。あと、改めて思うけど今日ぐらいちゃんと剃ってこいよ。

「おい佑都、お前なに最初からお洒落な曲でかっこつけようとしてんだよ」

「そうだよ、俺らはまずはコレだろ?」

今井はそう言いながら流れ作業のように一曲目を予約した。ああそうだ、まずはこれでインパクト残さないと。そう思ううちに、富士山をバックに1曲目の曲名がモニターに浮かび上がり、一瞬今朝も聞いた前奏が流れてきた。マイクが2つしかないので、僕は後ろに手を組みながら腰をかがめ、思い切り息を吸う。


「『【きーーーみーーーがーーーーよーーーーーはーー】』」

僕ら3人、声を合わせての君が代大熱唱。これが僕たちの十八番さ。海外の国家だとスポーツの大会でこんな感じの場面があるけど、君が代は歌詞もあって穏やかに歌うのが普通だからね。実際僕も大会とかだとやんないし。腹の底からありったけの声を出し、マイクで歌う他2人にも負けないボリューム感。まあこいつらマイク持ってる意味ほぼないけどな。古河なんか若干音割れてるし。で、この歌詞に見合わない爆音に耐えかねた中田が机の下に入り1人避難訓練をする。ここまでがテンプレ。そしてこの熱唱中、初対面の人が相手の場合はその表情を見るのが楽しみだったりする。


 今日の場合だと、目についたのは岩田とおそらくその彼女であろう本田という少女。その娘はやや耳をふさいでいるが、どちらかと言うとわざとらしく、むしろ大笑いしている。で、岩田はというと若干引き気味のご様子。本田さんの隣にいる久保さんも口をぽかんと開けている。ふっ、どうだい?これが僕らなりの洗礼ってやつさ。あ、あと僕の前にいる藤松君?彼はちょっと表情が読めなかったなあ。おどおどしてるというか、俯瞰してみてるというか…


 そんな始まりからはや4時間、今は駅の近くのショッピングモールのフードコートにいる。久々に行くカラオケだったけど、本当に楽しかった。ボカロとアニソン、そしてお気に入りのアイドルの曲を全力熱唱。今井とは趣味が近いのもあり、共演する場面が多かった。ちなみに古河はちょっと古い曲が好きなようで、曲は半分くらいが演歌だった。


「楽しかったな、今井」また古河にじゃんけんで負け、人数分のパフェを持ってくるこいつにそう声をかける。

「ああ、また行きたいな」「悪いなあ翔平、次はちゃんと財布持ってくるよ」

他2人も最高の笑顔。僕の高校生活の船出は順風満帆なようだ。

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