お互いの免罪符

うわぁ@カラス推し

理由(免罪符、または大義名分)を持っている

魔王と勇者が対峙している。

互いに相手を見つめる目の奥に宿っている感情は同じだった。


魔王には、大事なものがあった。

周りのみんなが大好きで守りたかった。

魔王はとある田舎の領地を治めていた。

そこの領地は自然豊かで温かかった。

しかし、ある日、川の生き物が死んでいた。

そして、森の生き物も死んだ。

そして、人も。

最後に、森が枯れ果てた。

原因不明の災害に生き残ったのは自分だけ。


調べてみると、原因は川に有害物質が不法投棄され、それが水質汚染につながり、魚が病気になって、その魚を森の動物が食べ、人が食べた。

そして、そのゴミは都心部の人達が捨てていた。

そのとき、自分の中の何かが目覚めた。

暗い感情だった。憎悪とでも言うべきか。


魔王はとても強い力を持っていた。

元凶を全て滅ぼすことにした。

「何も悪くない周りのみんな」の敵討ちに。


それからは、都心部をぐちゃぐちゃにした。

「だって、王都の奴らが全部悪いんだもの。」

「先にやったのは向こうだよ。」


勇者が住んでいた街は王都だった。

といっても王都の端っこらへんであるが。

勇者は善良な両親ーかっこいいお父さんと穏やかなお母さんがいた。二人とも大好きだった。本当に。

ある日、王様が「建国百周年祭」を王都で開くことにした。

「建国百周年祭」はキラキラしていて、屋台の食べ物は美味しくて、とても幸せだった。

だけど、キラキラしているために、蛾がたくさんやってきた。みんな嫌がった。

そこで、殺虫剤のスプレー缶をみんなが噴射。

勇者も例外ではなかった。

ただ、お父さんとお母さんはやらなかった。

その後、そのスプレー缶を捨てようとしたが、ゴミ箱はスプレー缶で溢れかえっていて、捨てられなかった。

そこで、みんなは何も考えず川に投げ捨てた。

「だって、他に捨てる場所がないんだもの。」

「捨てたらだめとか、知らないもの。」

「みんなやっていたから。」

「ちょっとくらい大丈夫だと思った。」


そして、後日王都はぐちゃぐちゃになった。


勇者の両親は死んだ。

勇者を庇ったのだ。

勇者は善良な両親が死んだことにとてつもなくショックを受けた。

「親は何も悪いことしてないのに、どうして死ななくちゃいけなかったの?こんなのおかしいよ。」

「魔王は罪無き善人を殺したんだ。」


勇者にも強い力があった。

魔王を倒しに行くことにした。

「罪のない人」の敵討ちに。


魔王と勇者は目に「恨み」を宿して対峙してる。

どちらが悪い?

どっちも悪い?

魔王は関係のない人も殺した。

勇者は川に投げた人たちの一人。

でも、理由という名の免罪符というべきか、大義名分とでもいうべきか?

それを持っている二人は似た思い「悪くない人のため」というものを持っているのに分かち合えない。

きっと、理由が相互理解の邪魔をしている。

だって、理由があれば自分は悪くないのだから。

こうなってしまったのはなぜだろうか。

これはお互いに自分を正当化したことによって生まれた復讐をする話。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

お互いの免罪符 うわぁ@カラス推し @421334213

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ