第7話 閃き

 巨大な体。

 赤鱗に覆われた皮膚に、大きな翼と爪。

 大口の牙に鋭い眼光。


「これが、火竜⋯⋯」


 剣を抜く。


「我と少女のことは気にするな、自分のことだけ考えて戦え」


「はい!」


 アレン様の言葉に頷き、構える。


「くるよ!」


 火竜が息を大きく吸い込む。


 きびすを返し、岩陰に隠れる。


 ゴオオーッという音と共に、横を炎の放流が過ぎていく。


「ヒール」


 軽く焼けた肌を治療する。


 岩陰から飛び出し、一気に火竜と距離を詰める。


 爪。


 交わし、隙の出来た火竜の足を思い切り剣で斬りつける。


「グギャアアアアア!!」


 鱗が割かれ、血が吹き出す。


 よし。

 倒せる。


「ホーリーライトニング!」


 傷口に向け魔法を放つ。


 鱗に魔法が弾かれる。


「!?」


 火竜は魔法耐性が高い?


 アレン様に、もう少し火竜について聞いておけばよかった。


「おねえちゃん、あぶないっ!!」


「え?」


 死角から爪。


 攻撃を受ける瞬間、わたしと火竜の間に女の子が飛び出し、わたしの代わりに攻撃を受けて吹き飛んだ。


「!? いやあああーっ!?」


 血だらけで転がる少女。


 火竜。


 倒れた少女にゆっくりと近づき、爪を振り上げる。


「くっ⋯⋯!」


 火竜とわたしの間合い。


 魔法なら届く。

 剣は間に合わない。


 でも、魔法は効かない。

 剣なら倒せる。


「⋯⋯」


 それなら。


「一か八か、です」


 ピコーン!


 額に指先を当て、詠唱破棄。


 雷が体を駆け巡り、全身が活性化していくのを感じた。

 剣を鞘に収め、中段に構える。

 そこから、一足飛びに火竜の腹部に飛び込んだ。


「雷迅一華閃!」


 雷を伴った一撃を火竜の腹に叩き込む。


「グギャアアアアアーッ!!」


 腹から勢いよく血が吹き出し、赤い華を咲かせた。


「ふははははは!! 土壇場で技を閃くとは! やるではないか!」


 火竜が力なく倒れる。


「や、やったぁ⋯⋯あっ! あの女の子は!」


 見ると、アレン様が回復魔法で治療しているところだった。


 駆け寄ると、ゆっくりと眼を開く少女。


「良かったぁ⋯⋯」


「!? 火竜は!? 火竜はどうなったの!?」


「安心してください。火竜は、わたしが倒しましたから」


 起き上がり、焦った様子で火竜に駆け寄る女の子。


 その時、火竜の体が収縮し、一人の女性へと姿を変えた。


「!?」


「やはり、そうだったか」


 アレン様の声が、静まり返った谷に響いた。




魔王アレン Lv1001

勇者ティナ Lv28→Lv34

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