チートして強くなって異世界に転生して稼ごうと思ったら魔王がチート過ぎるので地道にレベルを上げて物理で殴ろうと思います。
長谷川由紀路
第1話 レベルを上げて物理で殴ろう!
※ この第1話はビューワー設定を「
令和6年6月6日、
神棚から落ちてきた牡丹餅を6つ食べた俺は、食中毒で死んだ。
享年36歳。断末魔は拷問のような苦しみだったが、
それでも、いい人生だったと思いたい。
地元の県立高校を卒業した俺は、
会社員になることもなく、気ままな生活を送ってきた。
町内会の放送係をして、
4万円の年収を得ていたので無職ではなかったはずだ。
そう思いたい。
死んでみて驚いたのは、
まあ、それ以上に驚いたことがある。
聞いたことがある人もいると思うが、
昭和の中頃の火葬場は、
小窓から焼却炉の中を確認できるようになってる施設もあったらしい。
俺の爺ちゃん曰く、
人間というやつは、焼けると烏賊のスルメのように反るらしい。
噂には聞いていたが、
俺、見事に反りました。
人間も卒業してしまった俺は、
放心した?
え ?
お、俺、死んだんだよな ?
「え‥ ?!」
思わず声を上げた瞬間、夢から覚めたかのような感覚がした。
俺はいつの間にか、
薄暗く、雑然とした
人の気配は無い。
外は明るいのに、深夜かの様にしんとしていた。
窓の外を見ると、影ひとつない真っ白な地面が、
地平線があるのかどうかも不確かなほどに広がっている。
「なんじゃこれ‥」
事務所の外に出てみると、
事務所の小屋だけは、むしろ異様なまでに現実感を湛えている。
俺は、小屋をぐるりと一周してみた。
どういうことだ、どの方向も一様に、真あああっ‥ 白な地面が、延っ‥ 々と続いているではないか。地球平面説は正しかった?
俺は、小屋から少し歩いてみた。
ふと、ふりかえると、思いのほか、小屋が小さく見えた。何も遮るものがないのに、つい見失いそうで、怖くなって慌てて小屋まで駆け戻った。
「ごめんなさい! 遅くなりました!」
──!?
それは、深夜アニメの女性声優の演技かのように可憐な声だった。
ふりかえると、本当に可憐な少女がいた。ピンク髪の。いや、ウイッグなどではなく、本当にピンク色の髪をした少女がそこにいる。
「ここ、どこですか?」
本能で話しかけると事案にされかねない。俺は、当たり障りのない、ごくごく自然な質問をした。
「あっ‥ もしかして、事務所から、離れちゃいました ?」
「不味かったですか‥ ?」
「──どのくらい離れちゃったか、覚えてます ?」
「300メートルくらいですかね‥」
「そうですか‥ まあ、しょうがないです。とりあえず、事務所へどうぞ‥」
何がしょうがないのか‥
事案になりそうなのが怖くて聞くことも出来ず、俺は、その可憐な娘に促されて、事務所へと戻り、先ほど目を覚ました椅子に再び腰かけた。
静寂した世界に、椅子の軋む音と、その可憐な娘の吐息だけが響く。
「ここ、天国ですか ?」
俺は、人生最大の名推理を言葉にした。
「あはは‥ まさか‥ 貴方は天国へは行けません。残念ながら‥」
「俺、地獄行きですか‥」
「はい」
――ええええええ‥(汗)
あっれえぇ‥ 何が、何がまずかった ?
俺の人生、何がまずかった ?
無職ってこと‥ ?
いやいや、年収4万はあった。
そんなご無体なことがあるはずがない。
となると‥ 俺は、思い出したくない記憶を探らざるを得ない。
中学2年の時、幼馴染の
何も、放課後の教室に侵入してこっそり吹いたわけではない。
音楽の時間に、マジで、不可抗力で吹いてしまったのだ。思い返せば、その罪悪感で、俺は、30代で童貞のままと言う名の魔法使いになり、死んだ。
やっぱり‥ あれか‥(しくしく‥)
「あ、泣かないで‥ 大丈夫だから‥ 私は、無実の
て、天使‥
「天使‥ の、ゆかり‥ さん? え? 俺は、何の罪を‥」
「牡丹餅ですよ‥ 食べたでしょ? あれは神様の落とし物で、神様は大変にお怒りで、弁償しなければ地獄へ突き落とせと‥」
おい、神様、氏子に何しとんねん‥
「え、弁償すれば、天国へ行けるんですか‥ あ! そうだ、お金‥!」
ポケットを弄ると、令和元年の百円硬貨が1枚だけ入っていた。
「これ、使えますか?」
「使えますけど‥ それでは足りませんから、働き口を紹介しますね──」
そう云って、ゆかりさんは指を宙に走らせた。すると、地図のようなものが空間に現れた。
「──そうですね‥ 貴方のいた宇宙のとなりにある、この宇宙に転生するのがいいと思うのですが‥ 貴方のいた宇宙は、
「じゅ、じゅうのじゅうの‥ それ、何年前ですか?」
「単位は何でもいいです‥ 秒でも年でも世紀でも、遥か昔すぎて、単位は誤差にすらならないので──」
そんなかけ離れた世界に文化的な共通点などあるのだろうか?
「ちょっと、調べるので待っていてくださいね‥」
「はい‥」
そう云って、ゆかりさんは、また宙に指を走らせる。
「貴方のいた頃の宇宙は、直径930億光年ほどだったはずですが‥ 寂しいかもしれませんが、いわゆる知的生命体は地球人だけだったんですよ‥ なので、ここもそのはずなんだけど‥ なんだこれ?
「え? 違うんですか?」
「え‥ なにこれ‥
「嫌です、俺、勇者になります 」
これ、わかった‥ 異世界転生するやつだ !!!!
「では‥ 貴方のステータスにボーナスを付与しましょう‥」
きたあああああああああああ !!!!
「オナシャス‥!」
俺がそう答えると、
ゆかりさんは俺の顔の間近で何かの印を切るように宙に指を走らせ、軽く俺の額に触れた。すると、俺の眼前に文字が出現した。
【レベル】 1
【物 理】 1
【知 性】 1
【信仰心】 0
【 運 】 1
「これが、全ての
で、でたあああああああああああ !!!!
あ、でも‥
俺の小学校の通知表、こんなんだった‥
「貴方のいた宇宙では、まだこれを編集する方法は見つかっていなかったでしょ ? でも、貴方がこれから転生する宇宙では、これを編集する方法を、どこかのビッグバンの段階で奇跡的に見つけたのかもしれません‥ ですが‥ 不確定性原理の許容内なのか‥ だとしても、発生確率は最低でもペンテーションのオーダーの逆数‥」
うん、わからん。
なにやらぶつくさ言いながら、ゆかりさんが俺の眼前で再び印を切る。すると、出現していた文字が書き換わった。
【レベル】 10
【物 理】 1
【知 性】 1
【信仰心】 0
【 運 】 1
「おお !」
「これで、あなたのいた宇宙ならば、オリンピックで優勝も間違いなしの超人ですね !」
「あ、でも‥ なんか、レベルだけ上って、ステータスが増えてないんじゃ‥」
「あ、違います‥ このステータスはこう見るのです‥」
【レベル】 1
【物 理】 𝑓 1 (1) = 2
【知 性】 𝑓 1 (1) = 2
【信仰心】 𝑓 0 (1) = 2
【 運 】 𝑓 1 (1) = 2
↓
【レベル】 10
【物 理】 𝑓 1 (10) = 20
【知 性】 𝑓 1 (10) = 20
【信仰心】 𝑓 0 (10) = 11
【 運 】 𝑓 1 (10) = 20
「え、えふ‥」
「
「えふじー‥ ソシャゲ、ですか‥」
「それは
「‥そ、そうなんですか? あ、もう使えますか?」
「いいえ‥ まだです‥」
そう云うと、ゆかりさんは、さらにステータスを書き変えはじめた。
【レベル】 10
【物 理】 1
【知 性】 3
【信仰心】 0
【 運 】 1
「これで、0階レベルの魔法を認知はできるはずです‥」
「まじですか‥」
なにか、俺という存在に劇的な変化は感じられない。
「あ、
「え? 計算するんですか?」
「え?」
𝑓 0 (n) = n+1
𝑓 a (n) = 𝑓^n a-1 (n)
「
𝑓 2(𝑓 2(
𝑓 2(𝑓 2(𝑓 1(𝑓 1(
𝑓 2(𝑓 2(𝑓 1(𝑓 1(𝑓 0(𝑓 0
𝑓 2(𝑓 2(𝑓 1(𝑓 1(𝑓 0
𝑓 2(𝑓 2(𝑓 1(𝑓 1
𝑓 2(𝑓 2(𝑓 1(
𝑓 2(𝑓 2(𝑓 1(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0
𝑓 2(𝑓 2(𝑓 1(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0
𝑓 2(𝑓 2(𝑓 1(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0
𝑓 2(𝑓 2(𝑓 1(𝑓 0(𝑓 0
𝑓 2(𝑓 2(𝑓 1(𝑓 0
𝑓 2(𝑓 2(𝑓 1
𝑓 2(𝑓 2(
𝑓 2(𝑓 2(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0
𝑓 2(𝑓 2(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0
𝑓 2(𝑓 2(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0
𝑓 2(𝑓 2(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0
𝑓 2(𝑓 2(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0
𝑓 2(𝑓 2(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0
𝑓 2(𝑓 2(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0
𝑓 2(𝑓 2(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0
𝑓 2(𝑓 2(𝑓 0(𝑓 0(𝑓 0
𝑓 2(𝑓 2(𝑓 0(𝑓 0
𝑓 2(𝑓 2(𝑓 0
𝑓 2(
:
𝑓 2(
:
2^402653184×402653184
「ふぅ‥ 『
「見たくないです。あ、でも、レベルを3まで落としてもこれだから‥ え? 地球だと20で天才レベルなんですよね?」
「そうですよ‥ で、0階レベルの魔法が使えるようになるには‥」
ゆかりさんは、さらにステータスを書き変える。
【レベル】 10
【物 理】 1
【知 性】 ω+1
【信仰心】 0
【 運 】 1
「これで魔法使いです!」
「魔法使いだった俺が、ついに本当に魔法使いになったのか‥(遠い目)」
「は?」
てか‥
「なに
「順序数です。自然数の0を空集合{}、つまり空の集合としたとき、自然数の1は1より小さな自然数全体の集合{0}で、自然数の2は2より小さな自然数全体の集合{0,1}で、自然数の3は3より小さな自然数全体の集合{0,1,2}で、それら自然数全体の集合{0,1,2,3,…∞}が最小の極限順序数ωで、ω+1は自然数全体の集合にωを加えた集合{0,1,2,3,…∞,ω}です。」
「8時だよ、全員──」
「それはドリフ」
「まじめな話、(ω+1)
「そうです」
「では、ω
「存在しません」
「なら‥
𝑓 ω (𝑓 ω (
はい、論破。ツイッター歴10年は伊達じゃないぜ…
「ふふふ… いい質問ですね、
俺氏、真剣に考える(考え中)。
「あ、これ‥」
𝑓 ω (𝑓 ω (𝑓
𝑓 ω (𝑓ω (𝑓
𝑓 ω (𝑓
𝑓 ω (𝑓
「これは強い‥」
「ふふ、レベルが64になればステータス値はグラハム数ほどに膨れ上がりますよ‥ ふふふ‥」
ゆかりさんは、何やら含み笑いをしながらステータスを書き変える。
【レベル】 65
【物 理】 ω+1
【知 性】 ω+1
【信仰心】 0
【 運 】 ω+1
「これで、全パラメータがグラハム数以上‥ ふふふ‥ ふふふ‥」
「俺、最強になっちゃったかも‥?」
「いえ‥ この程度では‥」
「え‥? なら、MAXでお願いできませんか‥ 俺、2回も死にたくないです‥」
「ううん‥
『
『
『
『
というのを『
『ω^2+
『
『
その極限が『
ここからがグロくて、
『
『ω^(
『ω^(ω+1)+
『ω^(
いつか『ω^(
『ω^(
『ω^(ω^ω+
『ω^(ω^(
『ω^(ω^
『ω^(ω^(ω+1)
『ω^(ω^(ω+
『ω^(ω^(ω+
つまり、そうして得られる、無限に続く
う、うん(思考停止)。
「それで、お願いします!」
「わかりました」
ゆかりさんの指が宙を走るその回数が、今までよりも断然多くなった。
【レベル】 10^100
【物 理】 ε_0 + 1
【知 性】 ε_0 + 1
【信仰心】 0
【 運 】 ε_0 + 1
「プラス1は、おまじないだと思ってください‥」
「レベルも凄いことに‥ これで、俺のパラメータ値はどれくらいになりますか?」
「そうですね‥ レベルを63まで下げると『ふぃっしゅ数バージョン5』に近似します‥」
「あれ? 信仰心は?」
「ああ、それは、0階レベルの世界では使わないパラメータです‥」
「あ、でも『
ふと、ゆかりさんの顔を見ると、怪訝な面持ちで異世界の情報を見ていた。
「これは、作戦を練り直した方がいいですね‥」
「え?」
「貴方が転生する予定の宇宙には魔王がいて、その魔王には四体の腹心がいるのですが‥ そのステータスがですね‥」
※ 魔王の四体の腹心の中で最弱の「ゴブリン」のステータス
【レベル】 10
【物 理】 小ヴェブレン順序数
【知 性】 小ヴェブレン順序数
【信仰心】 0
【 運 】 小ヴェブレン順序数
「ゴブリンが腹心かあ(弱そう)‥ レベルは10か‥ 勝てますか‥?」
「まさか‥
これがヴェブレン関数で
2変数ヴェブレン関数のφ(
つまりφ(
すなわち3変数ヴェブレン関数で
小ヴェブレン順序数は、多変数ヴェブレン関数の φ
「ああ(威嚇)‥ ?」
※ 魔王の四体の腹心の3番目の「オーク」のステータス
【レベル】 10
【物 理】 大ヴェブレン順序数
【知 性】 大ヴェブレン順序数
【信仰心】 0
【 運 】 大ヴェブレン順序数
※ 魔王の四体の腹心の2番目の「レッサーデーモン」のステータス
【レベル】 10
【物 理】 バッハマン・ハワード順序数
【知 性】 バッハマン・ハワード順序数
【信仰心】 0
【 運 】 バッハマン・ハワード順序数
※ 魔王の四体の腹心で最強の「アークーデーモン」のステータス
【レベル】 10
【物 理】 竹内・フェファーマン・ブーフホルツの順序数
【知 性】 竹内・フェファーマン・ブーフホルツの順序数
【信仰心】 0
【 運 】 竹内・フェファーマン・ブーフホルツの順序数
「まだ、ゴブリンとオークは、私の知識でなんとかなるかもしれませんが‥ レッサーデーモンがBHOで、アークーデーモンがTFBOというのは‥ ちょっと強すぎるんですよね‥ 魔王に至ってはPTO(ZFC)という
ええっ‥ と‥?
「あはは‥ ええと‥ あ、そうだ‥ 俺の‥ 俺の Twitter のフォロワーに、そういうの得意なbotな人がいて、その人に力を貸してもらいましょう !」
俺がそう言うと、ゆかりさんの表情が険しさを増した。眉間にしわを寄せ、人差し指を当てて、何やらぶつくさと言っている。
「botは‥」
「はい ?」
「botは‥ 人ではないのでは ?」
どおおおおー‥ でもええええええええええーっ!!!!!
「ど、どうでもよくはありません‥ 人以外は、私の管轄外ですから‥ まあ、 どちらにせよ、貴方のいた宇宙はもう、知的生命体すら存在していないんですけどね‥ 残念でしたー」
え?
「え?」
「あなたが小屋から離れるから‥(小声) この小屋を離れた距離が‥ 貴方のいた宇宙の時間軸なんです‥ あなたが死んでから、すでに
え?
「残念ですが‥」
「──ええと‥ あ、なら、そうだ、もう一回、もう一回、この小屋から離れれば‥ その魔王を消してしまえるのでは‥ ?」
「無理‥ 貴方のいた宇宙の時間軸としか、ここは繋がっていないから‥」
「ということは‥ 俺は‥?」
「考えることですね‥ あなた自身で‥ このまま、この地獄に留まりたくなければ‥」
こ、の、地、獄‥
終
制作・著作
━━━━━
ⒻⒼⒽ
【次回予告】
ユーカリ:ねえねえ! 山田! 知ってる ?
急増加関数 𝑓α(n)って、
αにめちゃくちゃ強い順序数を入れなくても、
nに大きな自然数を入れちゃえばいいんだって!
山田(俺):え!? じゃあ、
この地獄は無限に時間があるし、
無限に広くていくらでもかけるから、
𝑓 0(999999...)って9を書きまくって、
𝑓α(n)のnが最小の超越整数を十分に大きく超え
たら、魔王に勝てるってこと !?
ユーカリ:そうだよ ! 山田 ! 書こう! 9をいっぱい !
山田(俺):よーし、書くぞー !
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