ある日の会話集

❄︎コガ雪❄︎

チェバとセラ

「チェバ、そんなところで何してるの?」


「今は6の刻、少し前だからさ」


「そっか、もうそんな時間なんだね」


「セラも隣に来なよ。ほら、この石の上とかちょうどいいよ」


「でっでも、そこ落ちたら危ないよ」


「大丈夫だよ。一回落ちたことあるけど、ちょうど下に別の段差があるから大丈夫だよ」


「そ、そう?なら落ちた時は絶対に助けてね」


「助けられたらね」


「えーひどーい」


「冗談だよ、助けるから安心して」


「それなら」


石はそこに二人居ることが前提であるかのように自然に鎮座していた




「……なんでチェバはいつもヤーの儀が見てるの?」


「ヤーの儀?あぁそっか…セラいいこと教えてあげるよ。あれは儀式じゃなんだ」


「え?でも、村長さんが…」


「セラ……いや、なんでもない。今のは忘れてくれ」


「う、うん?」


「ごめんね……なんだかさ、ヤーの儀を見てるとさなんだか懐かしい気持ちになれるんだ。同時に寂しいとかも感じるんだ。1日の終わりを感じるって言うのかな。あぁそう、今日ってもう終わるんだって気持ちになるんだ。それと同時にもう今日って日はもう二度と来ないんだって気持ちになれるんだ。今日という日がかけがえのないものでも強制的に終わらせられる感覚?永遠だと思ってたものがいきなり打ち切られた感覚?なんて言うのかな、難しいな」


「チェバ…」


風が彼らの間をヒューと通る


「で、でもわかるよ、その気持ちは。私もお友達とお別れする時はなんだか寂しい気持ちになったから。でも、チェバ、知ってるかもしれないけどアマテラ神の教えだと私たちの世界は何巡もするから私たちが過ごした今日は次の世界の私たちが過ごすんだよ?私たちはいつまでも生きてるんだよ?」


「…セラ、僕たちが生きた今日はもう二度と帰ってこないんだ。アステラ神だって今日という日を戻すことはできないよ。だから、ここで僕は1日を太陽と一緒に振り返りたいんだ。毎日見てるものでも毎日違うんだ。それに、どこから見てもヤーの儀式は変わらないからね。」


「う、うん…」


彼女の暗い横顔をほのかに照らす


「ごめんセラこんな事、話しちゃって…」


寸刻の静寂が二人の間を通り過ぎる


「…あっ、ほら日が傾いてきた。」


「綺麗だね。海があかいね。」


「……」


海はざーざーと囁き


夕日は大地を紅く染め


空は刻々と焼けるように紅く染められる


空気はひんやりと冷たく


照らす夕日はぽかぽかとして暖かく


「なんでだろう、なんだか悲しくなってきた」


彼女は少し俯き、何かを思案する。


「ううん、違う、なんだか寂しいな。空気がなんだかいつもより澄んだ感じがする」


そう言って、彼女はひんやりと冷えた秋の空気を吸い込む


「深く息をするとなんだか…ねぇチェバ、チェバの言いたいことなんだかわかったよ。」


「そう?なら良かった」


「そっか、私が過ごした今日はもう帰ってこないんだね。」


「そんなもんだよ、みんな1日を数あるうちの1つとしか捉えてないんだ。今日だって僕の何十年ある人生のうちの1日にしか過ぎないんだよ。」


「明日も来る?」


「ううん、大丈夫、私はたまに1日を振り返るぐらいでいいかな。」




 村の鐘が鳴る。ごーんごーんと鳴る。




「あっ!チェバ!ネイマンさんが呼んでたよ!」


「なんでそれを先に言わない!」


「ごめん!」


「じゃ!行ってくる、また後で」


「また!」


夕焼けが彼女の後ろ姿を暖かく照らす


影は伸びる、どこまでも



「あとでね」


「チェバ」

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