キリン編 第5話:夜の向こう側

 ◆夜の裂け目:見えないものの正体


 夜空に広がる"境界"。

 それはただの暗闇ではなく、まるで夜そのものが削り取られたような空間だった。


 ゆりあは、キリンたちのそばでじっと見つめていた。


 ——その向こうに、何かがいる。


 はっきりとは見えない。

 けれど、確かに"何か"がこちらを覗いている。


「クック……"夜の向こう側"……」


 オウムが、小さく囁く。


「夜の向こう側……?」


 ゆりあは、境界の先を見つめる。

 けれど、そこには何も見えない。


 ただ、肌がざわつくような感覚だけが残る。


 ——本当に、"何か"がいるの?


「クック……"まだ"、見えてない……」


 オウムの声が、どこか不安げだった。



 ◆キリンたちは知っている


 キリンたちは、静かに夜空を見上げていた。

 まるで、"そこにいる存在"を認識しているかのように——。


「君たちは、これを知っていたの?」


 ゆりあが問いかけると、一匹のキリンがゆっくりと首を縦に振った。


「やっぱり……」


 キリンたちは、ずっと夜の変化を見守ってきた。

 そして、この"境界"が広がっていることも知っている。


 でも——


「……どうして、何も言わないの?」


 問いかけても、キリンたちは沈黙していた。

 ただ、静かに、ゆっくりと瞬きをするだけ。


 まるで、「私たちはただ"見届ける者"だ」と言っているように——。



 ◆夜が削られる理由


「クック……"夜の記憶"……」


 オウムがそっと囁いた。


「夜の記憶?」


 ゆりあは、オウムの言葉を噛みしめる。


 ——もし、夜そのものが削られているのだとしたら?

 ——その原因は、"夜の記憶が失われている"からなのかもしれない。


「クック……夜にしか見えないものが……消えていく……」


「……夜にしか見えないもの?」


 ゆりあは、思わず夜空を見上げた。

 確かに、星の光がいくつか消えている。


 でも、それだけではない——。


 ——本来ならば、夜には"何か"があったはずなのに。

 ——それが、"消えている"気がする。


「……何が、消えたの?」


 その瞬間——


 ——ザァァ……ザザァ……


 風がざわめいた。


 ゆりあの耳元で、かすかに"ささやき声"のようなものが聞こえた。


「……?」


 辺りを見回しても、誰もいない。

 けれど、確かに"何か"の気配があった。


 ——夜の欠けた空間の向こうから、"何か"がこちらを見ている。



 ◆夜の先に待つもの


「クック……"あれ"が、目覚める……」


「"あれ"……?」


 ゆりあは、思わず息を呑んだ。

 夜空の欠けた部分をじっと見つめる。


 そこは、ただの闇ではなかった。

 何かが、ゆっくりとその隙間から"こちらを覗いている"気がした。


 ——夜が削れることで、何かが目を覚ます。


 それが何なのかは、まだ分からない。

 けれど、それは"夜の一部ではない何か"。


「……このままじゃ、夜が……」


 ゆりあは、キリンたちを振り返った。

 彼らは、変わらず夜空を見つめている。


 まるで、「ここから先は、私たちの領域ではない」とでも言うように——。


「……私、もっと知りたい」


 ——夜の消失が何を意味するのか。

 ——この闇の向こうにいる"何か"の正体。


 ゆりあは、キリンたちとともに、それを見届ける覚悟を決めた。



 ◆次回「目覚めるもの」——夜の裂け目の向こうで


 夜が失われることで、何が生まれるのか?

 ゆりあは、ついに"夜の向こう側"を知ることになる——。


 To be continued…

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