ウミガメ編 第6話:波の流れが示すもの

 ◆夜明け前の決意:探しに行くべき場所


 ゆりあは、水槽の前で静かに目を閉じた。

 昨夜、ウミガメの記憶の中で見た「波の流れ」。

 それが故郷へ帰る道を示しているのなら——波の流れを知ることが鍵になる。


「クック……波……道……」


 オウムがぽつりと呟く。


「うん。波は、ただ漂っているだけじゃない。"どこかへ向かって流れている"んだよね」


 ゆりあは、水槽の中のウミガメを見つめる。

 彼は相変わらずゆったりと泳いでいたが、その目はどこか遠くを見ているようだった。


「ねぇ、君が泳いでいたときのこと、もう少し思い出せる?」


 ウミガメがゆっくりと瞬きをする。

 その瞬間——


 ——ザァァ…… ザザァ……


 再び波の音が耳元に響いた。



 ◆波の記憶:流れが指し示すもの


 ——青い海の中、ウミガメはただ泳ぎ続けていた。

 ——彼のすぐそばには、小さな波の流れ。

 ——それは、一定の方向へと進んでいる。


「……やっぱり、"流れ"があるんだ」


 ゆりあは、その流れをじっと見つめる。

 波の記憶の中では、特定の方向へ向かう流れがあった。


「クック……それ……道……?」


「うん、多分ね」


 けれど、その流れがどこに続いているのかは、まだ分からない。

 もっと詳しく知るには——


「……水族館の人に聞いてみる?」



 ◆海を知る人たち:波の専門家


 翌日、ゆりあは水族館の職員に話を聞いてみることにした。

 ウミガメの故郷を探すために、波の流れについて知りたかったからだ。


「すみません、ここのウミガメって、どこから来たんですか?」


 水族館のスタッフは、少し驚いた顔をしてから答えた。


「この子は、もともと漂流していたんですよ」


「……漂流?」


「ええ。大きな海流に乗って、日本の近くまで流されてきたんです。おそらく、南の海から来たんじゃないかって」


 ゆりあは、その言葉を頭の中で整理する。


 大きな海流に乗ってきた

 南の海……?


「クック……海流……道……」


「……そうか、"海流"だよ!」


 ウミガメがたどった道、それはただの波の流れではなく——**"海流"**だったんだ!



 ◆ウミガメの帰る道:海流が示す方向


「つまり、この海流を辿れば……君の故郷の場所が分かるかもしれない!」


 ゆりあは、水槽のウミガメを振り返った。

 彼は、ゆっくりと水面へ顔を出し、まるで答えるように瞬きをする。


「……でも、海流は常に動いているよね?」


 波の流れは変わる。

 もし、過去に流されたときと、今の海流の向きが違っていたら——?


「クック……風……海……変わる……?」


 オウムの言葉に、ゆりあは考え込む。


「うーん……そうだ!海流のデータを調べればいいんだ!」


 過去の海流の動きが分かれば、ウミガメの故郷の場所も特定できるかもしれない。


「水族館の人に、もっと詳しく聞いてみよう!」


 ウミガメの帰る場所を見つけるために——ゆりあは新たな手がかりを探すことを決めた。



 ◆次回「海流の地図:ウミガメの故郷への手がかり」

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