ウミガメ編 第5話:波が教えてくれること

 ◆波の記憶:夜の囁き


 その夜、ゆりあは静かに水槽の前に立っていた。

 ウミガメはゆったりと泳ぎ、時折、水面に顔を出す。

 昨日までと違うのは——ゆりあの心が、はっきりと"確信"を持ち始めたことだった。


「君の故郷は、霧の向こうにあるんだね」


 ゆりあの言葉に、ウミガメが一瞬だけ動きを止めた。

 まるで「そうだ」と言っているように見える。


 ——ザァァ…… ザザァ……


 波の音が、静かに響く。

 それは、まるで"答え"を伝えようとしているようだった。


「クック……波……知ってる……」


 オウムが、小さく囁く。


「波が……知ってる?」


 ゆりあは、そっと目を閉じた。

 すると——



 ◆波が運ぶ映像:記憶のかけら


 ——青い海。

 ——静かに流れる潮の流れ。

 ——そして、その中を泳ぐ、一匹のウミガメ。


「……これって……?」


 ゆりあの脳裏に、映像が流れ込む。

 それは、まるで波が記憶していたもの——"過去の光景"。


 ウミガメは海を漂いながら、ある方向へと進んでいた。

 目指しているのは——霧に包まれた島。


 けれど——


 ——突然、霧が濃くなり、視界が遮られる。

 ——進もうとしても、どこに向かえばいいのか分からなくなる。

 ——そして、島の姿が完全に消えた——。


「やっぱり……君の故郷は、隠されてしまったんだね……」


 ゆりあは、小さく息をのんだ。

 これはただの迷子じゃない。

 何者かが"意図的に"ウミガメの故郷を隠したのだ。



 ◆波の声を聞く:答えを求めて


「クック……波……道を知ってる……?」


 オウムの言葉に、ゆりあははっとした。


 ——波は、ただ音を立てているだけじゃない。

 ——"海の記憶"を運んでいる。


 もしかしたら、波の流れを辿れば、"霧の向こう"にたどり着けるのではないか?


「……波の流れ……そうか!」


 ゆりあは、水槽の中のウミガメを見つめた。

 彼は、静かに漂いながら、ゆりあの目をじっと見つめ返している。


「君の故郷を探すには……"波の流れ"を知る必要があるんだ!」


 波は、ただ漂っているように見えて、常に"ある方向"へと流れている。

 その流れを辿れば——霧を抜ける道が見つかるかもしれない!


「クック……波の道……」


 オウムの羽が、小さく揺れる。



 ◆ウミガメと共に:旅立ちの決意


「……君は、もう一度、故郷に帰りたい?」


 ゆりあが静かに問いかけると、ウミガメはゆっくりと瞬きをした。

 それは、まるで「はい」と答えているように見えた。


「じゃあ、一緒に探そう。波の流れが示す"道"を……」


 ゆりあは、そっと水槽に手を添えた。

 波の記憶が示すもの——それは、"故郷へ続く道"。


「明日、もう一度ここに来るよ。君のために、何かできるかもしれない」


 ウミガメは、まるで理解したかのように、静かに泳ぎ続けていた——。



 ◆次回「波の流れが示すもの」:故郷への道を探しに行く!

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