ウミガメ編 第4話:霧の向こうに見えるもの

 ◆夜の静寂:深まる謎


 その夜、ゆりあはいつものように水族館の水槽の前に立っていた。

 ウミガメは静かに泳ぎ、時折、水面に顔を出す。


「……ねぇ、君は本当に帰れるの?」


 ふと、ゆりあの口から言葉がこぼれる。

 ウミガメの"帰る場所"は、霧の向こうにあるはず——けれど、それはまだ見えない。


「クック……霧の中……消えた……」


 オウムがぽつりと呟いた。


「……消えた?」


 ゆりあは、そっと水槽に手を添える。

 その瞬間——


 ——ザァァ…… ザザァ……


 波の音が耳元で響き、ゆりあの頭の中に**"ある光景"**が流れ込んできた。



 ◆ウミガメの記憶:霧に包まれた島


 ——青い海に浮かぶ、小さな島。

 ——そこには、白い砂浜と緑の森が広がっていた。

 ——けれど、その次の瞬間——


 ——ふわりと、霧が広がる。

 ——島の姿が、ゆっくりと消えていく。


「……消えた?」


 ゆりあの心臓がドクンと跳ねる。

 ウミガメの故郷は、ただ見えなくなっただけじゃない——"消えた"のだ。


「クック……何かが……隠した……?」


 オウムの言葉に、ゆりあは息をのんだ。

 本当に"道が消えた"わけじゃない。


 ——誰かが、意図的に霧で隠した?


「……もしそうなら、どうやったら霧を晴らせるんだろう?」


 ウミガメは静かに泳ぎながら、ゆりあを見つめる。

 まるで「一緒に探してほしい」と言っているように——。



 ◆波が伝えるもの:隠された答え


「クック……波の記憶……」


 オウムが静かに囁く。


「波の記憶?」


 ゆりあは、水槽の中のウミガメを見つめた。

 もし、"波"が何かを覚えているのだとしたら——

 霧を晴らす鍵も、"波"の中にあるのかもしれない。


「君の故郷が消えた理由を知るには……"波"の声をもっと聞かないと」


 ゆりあは、小さく決意を固めた。

 ウミガメの探しているものを、一緒に見つけるために——。



 次回「波が教えてくれること」:霧を晴らす鍵とは?

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