キリン編 第3話:夜の囁き

 ◆星々に隠された記憶


「夜が、消えかけている——。」


 その言葉が、ゆりあの心の中に響いていた。

 昨夜、幻のキリンから聞いた謎の言葉。


 ——夜が、消える?


 そんなことがあり得るのだろうか?

 ゆりあは、水槽に映る夜空をじっと見つめながら考えていた。


「クック……夜の記憶……」


 オウムがそっと囁く。


「記憶……」


 夜が記憶を持つ——?

 ゆりあはふと、キリンたちを見つめた。


 彼らは今日も同じ方向を向いている。

 それは、まるで"過去"を見つめているようだった。


「もしかして……キリンたちは、夜がどう変わっていくのか、ずっと見ていたの?」


 ゆりあの問いに、キリンたちは静かに瞬きをした。

 それはまるで、「そうだ」と言っているかのように——。



 ◆星が失われていく理由


「クック……星……消える……」


 オウムが再び囁いた。


「星が消える?」


 ゆりあは、思わず夜空を見上げる。

 確かに、夜空には輝く星々が広がっていた。


 でも……何かが違う。


「昨日見た星の位置と、違うような……?」


 目を凝らして星を数えてみる。

 けれど、昨日と比べて違いがあるのか、はっきりとは分からなかった。


「……星は、常に動いている。だから、多少の違いがあるのは当たり前……でも……」


 ゆりあは、違和感を拭えなかった。


 ——もし、本当に夜が消えかけているのなら?

 ——もし、キリンたちが見つめるのは「星の動き」だけではないのなら?


「クック……夜の王は、見てる……」


 オウムの声に、ゆりあはハッとした。


「キリンたちは、"何かが失われていく"のを知ってるの?」


 キリンたちは、再びゆりあを一瞥し、ゆっくりと夜空に視線を戻した。


 それはまるで、"私たちはただ、見届けるだけ"と言っているように——。



 ◆夜空を見つめるキリンたちの役目


「……キリンは、夜を守る存在なの?」


 ゆりあの問いかけに、キリンの一匹がゆっくりと足を踏み出した。


 彼は、ゆりあのすぐ近くまで歩み寄ると、静かに瞬きをする。

 その仕草が、何かを語っているように見えた。


「クック……夜は、生きてる……」


 オウムの囁きに、ゆりあは息を呑む。


 夜が、生きている——?


「……それって、夜がただの"時間"じゃなくて、何かの"存在"だってこと?」


 キリンの瞳には、夜空が映っていた。

 そして、その奥に、言葉にならない"何か"が宿っている気がした。


「君たちは、夜の変化を"見届ける者"なの?」


 ゆりあが尋ねると、キリンはゆっくりと首を縦に振った。


 それは、まるで「そうだ」と言っているように——。



 ◆星々が消える夜


 ——その瞬間。


 夜空のどこかで、一つの星が光を失った。


「……え?」


 ゆりあは、驚いて目をこすった。

 けれど、確かにさっきまで光っていた星が、一つ消えていた。


「クック……夜の記憶……消えてる……」


 オウムの声が震える。


「……夜の記憶が、消えている……?」


 ゆりあは、自分の目を疑った。


 ——たった今、夜空から"何か"が消えた。

 ——そして、キリンたちはそれを見つめ続けている。


「夜が、消える……って、こういうこと?」


 キリンたちは、ただ静かに夜空を見つめていた。

 彼らは、知っている。


 夜が変わりゆくことを。

 夜が、"消えていく"ことを——。



 ◆ゆりあの決意:夜の真実を探す


「……夜が消えるって、どういうこと?」


 ゆりあは、星の消えた場所をじっと見つめた。


 もしかすると、夜の本当の姿を知ることができれば、その答えが分かるのかもしれない——。


「クック……知る時が来る……」


 オウムがそっと呟く。


「……私、もっと知りたい」


 ゆりあは、キリンたちを見つめた。

 彼らは、静かに佇んでいる。

 そして、ゆりあの問いには何も答えず、ただ夜空へと視線を向けていた。


「……まだ、知らなきゃいけないことがあるんだね」


 ゆりあは、小さく頷いた。


 ——夜の記憶が消えている。

 ——キリンたちは、それを"見届ける存在"。


 じゃあ、夜が消えてしまったら——その先には何があるの?


「……私に、何ができるんだろう?」


 夜の静寂の中で、ゆりあはそっと目を閉じた。


 キリンたちが見つめる"夜の真実"を知るために——。



 ◆次回「夜の境界線」——消えていく夜の正体


 夜が消えつつある。

 それは、どういう意味なのか?


 ゆりあは、夜の記憶の深部へと踏み込もうとする——。


 To be continued…

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