ペンギン編 第3話:消えたペンギンの記憶

 ◆記録室で見つけた「消えたペンギン」


 次の日、ゆりあは動物園の記録室へと向かった。

 ペンギンたちの行動の理由を知るには、過去の記録を調べるしかない——そう思ったからだ。


「……ペンギンたちが、"夜だけ"探しているもの……」


 それが何なのか、知りたかった。


 管理スタッフに頼んで、過去の記録を検索する。

 パソコンの画面をスクロールしながら、何か手がかりになるものを探す。


 すると——


「……展示個体、一羽、行方不明……?」


 ゆりあの指が、ぴたりと止まった。


 数年前、この動物園で一羽のペンギンが突然消えた——。



 ◆誰にも見つからなかったペンギン


 記録によると、そのペンギンは夜の間に姿を消したらしい。

 朝になっても見つからず、飼育スタッフが園内をくまなく探した。


 けれど、どこにもいなかった。


 防犯カメラにも映らず、檻も閉まっていた。

 まるで——最初から存在しなかったかのように。


「……消えた?」


 ゆりあは、昨日見た水面の影を思い出す。


 ——夜にだけ現れる影。

 ——ペンギンたちが探し続ける"誰か"。


「まさか……昨日の影は……?」


 ゆりあの胸が、ドクンと跳ねた。


 ペンギンたちは、消えた仲間を探しているのではないか?



 ◆消えたペンギンは、まだここにいる?


「クック……探してる……」


 オウムが、静かに囁く。


「……やっぱり、ペンギンたちは、あの子を探しているんだね……」


 ゆりあは、そっと記録を閉じた。


 消えたペンギンは、どこへ行ったのか?

 本当に、どこかへ行ってしまったのか?


 それとも——


 まだ、この動物園にいるのか?


「クック……"夜だけ"……残るもの……」


 ゆりあは、オウムの言葉を反芻した。


 "夜だけ"見えるもの。

 それは、何を意味するのか?


「……確かめてみよう。」


 ゆりあは、決意を固め、再びペンギンたちのもとへ向かった。



 ◆夜のペンギンエリアへ


 夜が訪れた。


 ゆりあは、昨日と同じようにペンギンエリアへ向かう。

 ペンギンたちは、静かに輪を作り、じっと水面を見つめていた。


「キュル……キュッ……」


 彼らの鳴き声は、どこか切なげだった。


 ゆりあは、そっと水面に目を向ける。


 月の光が反射し、静かな波紋が広がる。


 その瞬間——


 ——ピチャッ。


 静かな音とともに、水面に**"もう一羽のペンギン"の影が映った。**


「……やっぱり……いるんだね……」


 消えたペンギン。


 それは——


 夜の記憶として、この場所に残っているのかもしれない。



 ◆ペンギンたちの想い


 ペンギンたちは、水面の影を見つめたまま、小さく鳴く。


「キュルル……キュッ……」


 それは、仲間を呼ぶような、寂しげな声。


「……君たちは、ずっと探していたんだね。」


 ゆりあは、ペンギンたちの切ない気持ちを思うと、胸が締めつけられた。


 仲間が突然消えてしまった。

 だけど、忘れることはできない。

 だから、ずっと探し続ける——夜の中で。


「クック……"夜の巡り"……」


 オウムの声が、静かに響く。


 夜の中で、消えてしまったもの。

 けれど、それは本当に消えたわけではない。


 ペンギンたちが探している限り——


 きっと、また見つけられる。



 ◆決意と夜の記憶


「……きっと、明日も君たちはここに来るんだね。」


 ゆりあは、水面に映る影を見つめた。


 それは、ペンギンたちの"想い"そのもの。

 そして——仲間への愛の証だった。


 ペンギンたちは、静かに夜空を見上げた。


「キュルル……」


 その瞳に、月の光が映り込む。


「……明日、また会えるかな?」


 ゆりあがそっと囁くと、水面の影がゆらりと揺れた。


 まるで、「うん」と頷くように——。


 To be continued…

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