【お題「10」】右から10番目の扉

つけあげ103

前編

「ダンジョンの階層に宝を置いてきた。扉を開けてたどり着いた者にくれてやろう」

新しく出現したダンジョンの入り口にはそう書かれたプレートがあった。

ダンジョンに最初に挑戦したのはCランクの冒険者。冒険者ギルドの依頼をこなしての帰り道に、たまたまダンジョンを見つけたのである。

モンスターを3匹倒した時に、

[ポンッ]と音がして巻物スクロールが現れた。

その巻物には、

「右から2番目の扉の前に立ち、信念を持って「オープン、セサミ」と唱えよ。さすれば宝は手に入るだろう」と書かれてあった。

なんの事かわからなかったが、ほどなく知る事が出来た。Cランク冒険者がダンジョン内の開けた場所に入ると地面が光って今まで見た事もないモンスターが出現した。モンスターを倒すと17個の扉が現れたのである。

巻物に書かれてたのはこの事だったのかと思い、Cランク冒険者は右から2番目の扉の前に立ち「オープン、セサミ」と唱えた。

扉が開かれ、その先には下の階層に続く階段があった。階段を降りた所に宝箱が置かれていた。宝箱の中にはAランクモンスターを討伐時の報酬並みの宝石が入っていた。


◇◇◇◇◇


Cランク冒険者は冒険者ギルドに行くと請け負った依頼の完了報告に行った。この時はダンジョンの宝を独り占めしたいと考えていたので、新しく出現したダンジョンの事は報告しなかった。

しかし酒に弱かったので、宝獲得を祝って酒場で飲んでる時に口を滑らせてダンジョンの事を話してしまった。ダンジョンは噂となり、ダンジョンを探索する冒険者が増えていった。


◇◇◇◇


各階層を攻略すると出現する宝が豪華だったので、ダンジョンの各階層の攻略が進んでいった。

ダンジョン内に出てくるモンスターは3種類に分類された。

・他のダンジョンでも見られるモンスター。一般モンスターと呼ぶ事にする

・規則性を持って移動する赤い炎と青い炎。赤い炎は倒す事が出来たが、青い炎の方はSランク冒険者でも倒す事が出来なかった。巡回モンスターと呼ぶ事にする

・広場に現れる他のダンジョンでは見た事もないモンスター。ガーディアンモンスターと呼ぶ事にする


ガーディアンモンスターを倒した時に現れる扉は17個で、どの扉が宝箱に通ずるかを示す巻物が出現する条件は階層事に異なっていた。

・一般モンスターを3体倒す

・巡回モンスターを2回やり過ごす

・ガーディアンモンスターを倒した後、広場で3日過ごす

などなど

巻物が無くともガーディアンモンスターを倒すと17個の扉は出現するので、当てずっぽうに扉の前に立ち「オープン、セサミ」と唱えても扉は開かれる事はなかった。また扉は出現してから4日経過すると、扉は消滅し巻物を出現させる条件がリセットされる。

階層が進むにつれて巻物が出てくる条件が難しくなり条件を見つけるのに時間がかかった。

冒険者がこのダンジョンを攻略するようになってから1ヶ月半、ついに最後の巻物が現れた。最後だとわかったのは、11階層の巻物に「最後の扉だ。右から10番目の扉の前に立ち、信念を持って「オープン、セサミ」と唱えよ」と記されてたからだ。


11階層のガーディアンモンスターを倒した時にはまだ巻物は出現してなく、広場に巻物を出現させるなにかがあるのではないかと調べる冒険者が居た。4日目になった時に

[ポンッ]と音がして巻物が現れた。冒険者は小躍りして、右から10番目の扉の前に立ち「オープン、セサミ」と唱えた。

だが、扉は開かれなかった。何度も唱えたが扉は開かれなかった。残り16個の扉の前で唱えても結果は変わらなかった。


扉が現れてから4日後、扉は消滅し巻物が出現する条件はリセットされた。

他の冒険者がガーディアンモンスターを倒し広場で4日目を迎えた時も巻物は現れた。だが、扉は開かれなかった。


11階層の扉が出現してから3週間。いまだに扉は開かれず。


【後編に続く】〈僕〉が「右から10番目の扉」の謎に挑みます

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る