オレンジファーストキス
みかんの実
第1話 はじめての彼氏が出来ました
1ヶ月前に彼氏が出来た。
16年間生きてきて、はじめての彼氏。
「
「えっ……」
ホームルームが終わってチャイムが鳴ると同時に、隣のクラスの筈の
まだ、担任の先生が教壇の上に立っているにも関わらず、私の鞄に荷物を詰め込むのを手伝うという横暴さ。
無理矢理、私の右手を引っ張って、クラスメート達に見守れながら教室を後にする。
いつもの事で見慣れた光景だけど、きっと皆、呆れてる。
「急げ、急げー!」
「ちょっと、ねぇ!急に何処行くの?」
少し子供っぽくてヤンチャな朝陽。
子供の頃は私の方が背が大きかったのに、中学であっという間に身長を抜かされた。
真っ直ぐで、優しくて、勉強は出来ないけど、私よりずっと運動神経はいい。
顔もわんこ系で一部の女子達から好意を持たれているようだ。
「ほら、早く走れよ!」
何をそんなに、突っ走っているのか。
でも、乱暴に急かすその声色は、低くて優しくて誰よりも安心する。
握られた手は、私よりずっと大きくて男の子の手をしていた。
*
すぐ後ろで、扉が閉まる音と発車合図のメロディーが鳴り響く。
「……っ、間に合った…」
「……な、なんなのよ、もう」
学校から駅まで走らされて、私たちは息を切らしながら電車に乗り込んだ。
肩で息をする朝陽の横に、並んで座る私も肩で息をしている。
苦しくて言葉が途切れて、酸素が足りなくて息が上手く出来ない。
「飲む?」
もう復活したのか、朝陽がヘラヘラと笑いながらペットボトルを鞄から取り出した。
「間接キスだけどー」
何を今更。
無理矢理ペットボトルを奪い、一気飲みして中を空にしてやった。
「ひでー、俺の分なくなっちゃったじゃん!」
「あ、んたが、急に走らせるから悪いんでしょ!?」
「ひゃはは、あんな入ってたのに飲み過ぎだろ!」
あんたは大きな声で笑い過ぎだって。
慌てて電車内を見渡せば、急いで走ってきた甲斐あってか、同じ制服姿の学生はいない。
乗車してる人も少なくて、きっとこの中にいる人達は私達の事を知らないんだろうな。
「もう、どこまで行くつもり?」
「誰も知らないところで、陽向ちゃんとデート♡」
朝陽はいつも突発的に行動する奴だ。
自分に真っ直ぐで嘘はつかない。他人には嘘つきまくりだけど。
いつも本当のことから逃げている私なんかより、ずっと、ずっと正直に生きている。
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