忘れられた教室
天蝶
七不思議Part1
ある学校には、誰も入ったことのない「忘れられた教室」がありました。毎年、七不思議に選ばれるその教室は、特に怖い噂がたくさんありました。生徒たちは、「入ったら帰れない」とか「先生がいます」といった話をしながら、恐れながらも興味を持っていました。
ある日、好奇心旺盛なAくんは友達と一緒にその教室に行くことに決めました。ドアを開けると、埃をかぶった机や椅子が並び、まるで時が止まったかのような静けさが支配していました。「ここ、なんだか不気味だな…」とAくんがつぶやくと、友達たちも同意しました。
教室の奥に進むと、黒板には奇妙な文字が刻まれていました。それは落書きに見えましたが、よく見ると「ここで勉強した生徒は、永遠に帰れない」という内容でした。冗談半分にその言葉を読み上げると、突然ドアがバタンと閉まりました。
パニックになった友達たちはドアを開けようと必死でした。しかし、ドアはびくともしません。無限に続く時間の中で、彼らは恐怖に包まれました。その時、教室の隅から微かに声が聞こえてきました。
「まだ終わってない…まだ勉強が足りない…」
その声は、まるでこの教室の生徒が、助けを求めるかのようでした。Aくんはその気味の悪い声に引き寄せられ、奥の黒板に近づきました。そこで彼は、かつてここで勉強をしていた同級生の姿を見つけました。顔が青ざめ、目には狂気が宿っています。彼は必死に「助けてくれ」と訴えていました。
その時、Aくんは気づきました。彼が読むことを拒否した「勉強」が、実はこの教室から逃げ出す唯一の方法だったのです。しかし、恐怖におののく友達を見て、彼は思わずその場から逃げ出しました。
外に出たAくんは、友達を置き去りにしてきたことに後悔しましたが、どうしようもありませんでした。それ以来、教室の噂はさらに広まりましたが、Aくんは誰にもその真実を語ることはありませんでした。
彼は学校を卒業しましたが、あの教室のことを忘れられず、ふとした瞬間にその声を思い出すのです。彼の心の中には、あの教室での生徒たちが生き続けていることを知っていました。
そして、彼はもう一度、その教室のドアが開くことを願わずにはいられなかったのです。
忘れられた教室 天蝶 @tenchoo
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