僕と青の騎士団  ~魔法が使えない僕の嫁は、女体化した騎士様です~

源宵乃

第1話

 これは、魔法の国に生まれながらまったく魔法が使えない僕が、男から女になった騎士様を嫁にした話の顛末です。(僕が婿になったともいう)


「あ、だめだよ!」 

 それはまだ声変わり前の少年のもの。灰色のローブは、まだ見習いとうことだ。

 目深にフードをかぶった少年の胸元から、毛玉がひとつ転がり出た。小さなウサギだ。

「森の奥は危ないって!」

 ウサギは森の奥へと入り込んでいった。

 藪の中ウサギが飛び込んだのと同時に、薄気味悪いうなり声が、聞こえた。

「ガウウッツ」

「アレク殿下! ゴブリンです!」

 少年の後ろから声をかけたのは、魔法使いのローブ姿の少女だった。

「ミリアム!」

 藪からガサガサと三体のゴブリンが姿を現した。

「クソっ、だから嫌だったんだよ!」

「殿下、これも魔法使いになるための修行ですわ」

「わかってるよ!」

 アレクは息をととのえ神妙な面持ちで呪文を唱えた。

「炎よ、集まり出でて爆ぜよ!」

 しかし、その手元から火球があらわれることはなかった。

「あれ、出ない……」

「アレク殿下、落ち着いて。難しい呪文じゃありませんわよ」

「炎よ、集まり出でて爆ぜよ! 爆ぜよっっ! 爆ぜよーーーっっ!」

 少年は同じ呪文を必死に繰り返した。

「何で、でないんだよぉっ!」

「そんなに連続すると、魔力なくなってしまいます」

「はあ、はあ、炎よ……げふっ……」

 アレクが呪文の途中で咳き込み、片膝をついたその時、背後から駆け寄る足音があった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る