IV
いつしか私らはどこまでもまっすぐに伸びる一方通行・五車線の道の人通りの多い歩道を北へ北へと向かって歩いていた。カフェがあれば入ろうと思いながら、コンビニはあってもカフェがない。コンビニでもいいかと考えているうちにアキはどんどん前へ進んでいってしまう。私はヘトヘトだった。
「もうタクシーで行こうよ」
タクシーはすぐにつかまった。だが乗ったはいいが道が混んでいてちっとも前に進まない。
「何なんこの街。どこもかしこも混んでるやん!」
「この時間はいつも混むんですわ」
「いいから行っちゃえ!」
「そんなムチャな!」
信号を待っているとき、急にアキがはっとするほど優しい口調で言った。
「サオリ、テラっちとはうまくいってんの?」
「最近もう連絡とってない」
「あいつ、頼りないけどいいヤツだよ。サオリのこと好きだし」
「ほっとけよ」
「ふるならふるで、ちゃんと話したほうがいいよ。あのままじゃテラっちがかわいそうだよ」
「なにいってんの。かわいそうなのは私だって」
アキはまるで姉のような目つきで私を見た。
「私らだって来年は卒業だし、私は働くし、サオリは大学でしょ? ちゃんとカタつけなきゃ。サオリもさー、いい加減成長しな」
「なにー」私はブチ切れた。「テメーは男つくることと成長することを取り違えてるだけだろ」
「それひどくねー? オメーはそうやっていつもただダダこねてるだけだろ」
「テメー姉貴のつもりかよ。テメーの化粧の心配先にしろよ」
「オメー前から言おうと思ってたんだけどさー、その髪型どうにかならねーのかよ」
「テメーこそその顔なんだよ、不細工なくせに下手な化粧しやがって」
「るせえよでけー声出しやがって、人様に迷惑かけてんじゃねーよ」
「それはテメーじゃねーかよ」
「ま、ま、落ち着いて落ち着いて」と運転手がおろおろしながら仲裁に入った。それから私らは互いの殻に閉じこもり、目的地に着くまで一言も口をきかなかった。
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