設定からプロローグまで独特ななんとも言えない灰色な世界観から始まります。sideによってそれぞれの目線から読み進めながら途中で、何度も込み上げてくるものがあるほど、苦しいエピソードの数々。かといって絶望一色にならない作者様のこの物語に込めたであろうメッセージが、キラキラと輝いています。時に考えさせられながら、希望と選択とは必ずしもひとつではないと思わされる場面。そしてラストの美しさ。最後まで、描写にもセリフにも胸を締め付けられ続けました。読み終えたからこそわかる、その名の通り、ビューティフル・ワールド。美しい作品でした。ありがとうございます。
政治犯やその家族が収容される第5強制区画、通称「第5区」を舞台に、過酷な環境で生きる人々の姿を描いた物語。この収容所で生まれ育った永久収容者カシアは。幼馴染の一時収容者キラと共に壮絶な日々を生き抜いています。彼らはある日サクラという女性に出会い、外の世界の存在を知ります。彼女は外国から拉致されてきた女性でした。
主人公カシアは地獄のような第5区で生まれ育ったにもかかわらず、優しさと純粋さを失わない少年。困っている人を見過ごせず、時に危険を顧みない行動に出ます。
対照的に、幼馴染のキラは現実主義者。第5区で生き抜くために、時に感情を捨て、冷静に判断し行動します。
全く異なる価値観を持っていても、お互いを深く理解し、強い友情で結ばれている二人。カシアはキラの不器用な優しさを知っており、キラはカシアの優しさを守ろうとします。そしてサクラの登場は世界から隔絶された第5区に外界の空気をもたらし、そんな二人に新たな世界を与えます。
絶望的な状況の中でも希望を見出そうとする登場人物たち。どんなに悲惨な場所にあっても、彼らは自分たちの「生きる意味」を模索し続けます。特に印象的なのは「笑顔」というモチーフ。笑顔を絶やさないことが、過酷な環境を生き抜くための武器になるという考えは、私たちの心に深く響きます。
キラが憧れた「外の世界」。カシアが夢見た「美しい世界」。そして彼らが最後に選択するものは。
この物語は読者に「自由」とは何か、「幸せ」とは何かを問いかけています。自由を奪われた日々の中で心の自由を大切にする彼らの姿は、現代を生きる私たちにも深い示唆を与えてくれます。読み終えた後にも彼らの生き方が心に残り、価値観を見つめ直すきっかけになる作品です。
本作は現代日本の隣に位置する独裁国家――式国という架空の国家が舞台となります。
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式国と日本の関係性は悪い。式国側は工作員を送り込み日本の情報を収集したり、日本国民を拉致したり、日本側からしたら悪と呼べる所業を繰り広げている。
しかし、式国側では悪しき日本という図式が浸透しており日本に対する所業は正義の所業とされている上、大半の式国民もそれを疑うことはない。
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そんな舞台です。
そんな式国の中で特定の者だけが収監される特別収容所で生まれ育った主人公カシアが、日本から拉致され、特別収容所へ運ばれたとある女性と出会い、そして――というお話となっております。
本作の魅力は数え切れないほどありますが、その中から2つ挙げさせていただきます。
1つはやはり創り込まれた舞台です。
式国の設定が仔細に創り込まれていることで、話がすっと入ってきて、登場人物の心情にフォーカスして読み進めることができます。
本作単体で読んでも創り込まれている印象なのですが、作者様の他作品を読むとより式国の理解が深まるというところも私的には非常に刺さりました。
もう1つは登場人物の描写です。
主人公カシアに関わる何人もの人物が物語の中で登場しますが、いずれの人物も丁寧に描写されていて、カシアとの関係、バックグラウンド、その場面での心情が事細かに伝わってきて非常に感情移入できます。
色々な登場人物の視点で描かれている物語が繋がったときは感涙ものです!
本当は物語が完結してから書こうと思っていたのですが、堪えきれず先出ししてしまいました。
どなたにでもオススメできる一作です!!!✨