第51話
反動は大きかった。
現世に、かたちをとどめておくことができなかったようだ。
引き換えに、すべての闇を散らして。
一斉に、燭台の火が灯る。
あたりが、ぱっと明るくなる。
気がつけば、もう夜明けが近いらしい。
空も少しずつ白みはじめている。
視界が、少しずつ明るくなる。
あ 、しまった。
そしてそのまま、乱れた
いくらなんでも、顔を見られるのはまずい。
特に、
「姉宮さま!」
怪異が消えたおかげで、動けるようになったのだろう。
「姉宮さま、ありがとうございます!」
「あ、
ちょっと離れて」
胸のあたりを、
夜が明けていてよかった、ちゃんと、女の体に戻っている。
これなら、触られても不審がられないはずだ。
「すごいわ、姉宮さま。
いったい何をしたの?
あの輝く剣はなんですか」
「あれは……。
一子相伝の一発芸というか……」
咄嗟のことで、考えてもみなかった。
だが、前の斎院だった
「ほら、わたしは前斎宮ということで」
「わたくしにもできるでしょうか」
「賀茂の祭神と相談するといいと思うわ」
顔を寄せ合うように話をしていると、遠くから足音が聞こえてきた。
どことなく、荒々しい。
先触れの声で、
やがて、口上を述べる取り次ぎ役の女房がやってきた。
たしか、
彼女を名代として、
「こちらから、目映い光が見えましたが、いったい何事ですか。
宮さまはご無事か」
尋ねる声に、
「
先ほどの怪異で荒れた状態でございますし、どうぞ今はご遠慮ください」
やんわりと拒む言葉も、
「なに、私は
内裏で怪異があり、どこも混乱していますゆえ」
ふてぶてしいほど落ち着いた
年の頃は、
横柄さすら感じる口ぶりだった。
「こちらで光の柱が見えたあと、怪異が収束したという報告を受けましたが。
どなたか、名うての術者でもいらっしゃるのか」
「いいえ。
偶然でございましょう」
淡々と応える
「
「はは、それもそうですな。
いつでも、お頼りください。
神子さまのお力を、独り占めするつもりはありません」
神子、ね……。
「本当に、ここには神仏の力の具現となるようなものはないのか」
先ほどと同じ、澄んだ声は詰問口調になった。
この声の持ち主が、神子だろうか。
伺いを立てられていることに気がついて、
心得たように、
「ございません。
女ばかりの場所で、皆身を寄せ合い震えておりましたら、闇が消えていったのです」
「……ふん」
不満たっぷりに相づちを打ったのは、神子のほうだ。
感じの悪い少年だ。
そう、
仮にも宮家の人間に対して、態度が横柄すぎる。
やがて用は済んだとばかり、足音が遠のいていく。
ほっと、
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