第34話
この手の情報は
「ところで、おまえは俺たちに協力する気はないか?」
「おまえは、『見える』上に、退治もできるようじゃないか」
「て、
さすがに、顔を蒼白にしているのは、驚きすぎではないかと思うのだが。
「ええっと」
「それって、禁色の恋の……隠れみのになれ、とかじゃなくて、怪異を退治するのに力を貸せってこと?」
本題からずれるなあと、
「は?」
「なんだ、禁色の恋というのは」
「いや、だから、
「……逢い引き」
「この橋のたもとで、そちらの
「あ、別に偏見ないから」
ひらひらと手を振り、
「どうしてそうなる」
「え?」
「俺たちは、怪異を退治せよという密命を果たしていただけだ。
だが、正直に言うときりがない。
だから、怪異退治にその腕を貸せ。
おまえが一人いると、捗りそうだからな」
「密命?」
思いがけない言葉に、
「最近、都ではあまりにも奇怪な事件が多い。
この橋でも、何人も行方不明になっている」
「……橋姫の仕業ね……じゃない、仕業、だ」
話口調は気を抜くと、素に戻ってしまう。
「不安を感じた
……今、この破魔の弓を射ることができるのが、俺だけだからな。
あの
いや、苛立っているのだろうか。
皇族出身者として、常に
「霊験あらたかな弓らしいが、俺にはよくわからない。
なにせ俺は、この世の外を見ることができないから。
それで、この弓を使うときには
「
「ああ」
「そのわりには、さっき橋姫が見えていなかったみたいだけど」
「きょ、今日は少し調子が悪かっただけだよ!」
人形のような面差しが、ぐにゃりとゆがむ。
まるで、
「だから、私がいれば大丈夫なんだ。
部外者は!」
「俺一人じゃ手におえないことも、おまえの調子が悪いときもあるじゃないか。
もう一人いれば楽なのにとは、ずっと考えていたことだ」
見た目どおり武骨な性格らしい。
こ、これは複雑な愛憎劇……?
これはこれで切ないわね。
なんとなく納得したような、していないような……。
「……でも……」
「おまえにも、負担になっているじゃないか」
「
だが、調子が悪いときだと、なかなか気配がつかめないことがある」
「それ、ちょっとわかるかも」
「都の様子が、なんだかへんだからしかたないよ。
おれも、なんか調子がおかしいときあるし。
目がかすんだみたいに、相手がよく見えないんだ」
特に、内裏の中とかね。
心の中で、ひっそりと眩く。
内裏の荒れ具合が、人に影響しないとは思えない
他人事ながら、なんだか心配だ。
「都は、なんだかおかしいよ。
この世の外と通じる人なら、絶対に影響を受けてると思う。
「……」
けれども、なんとなく肩のあたりから力が抜けている気がする。
気持ちは、わからないでもないな。
敵意を向けられてはいても、
禁色の恋敵という意味合いもあるかもしれないが、
自分が今まで見ていた、この世の外のものたちが、上手く見えなくなっていることが。
もともと見えない
自分の持っていた感覚のひとつを失っていきつつあるのかもしれないという、不安が。
「そういうわけで、おまえに協力してほしい。
必要なら、
ついでに、便乗させてもらうとする。
「たぶん、宮は了承すると思う。
でも、おれに手伝えっていうなら、ちょっと条件があるんだ。
いいかな?」
「条件?」
「そう、条件」
「たいしたことじゃないんだけどね……」
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