第17話
『
「そうよ。
諸行無常というやつよ」
「ところで、剣のままだと話しにくいから、人型になってくれない?」
『わがままな娘だな……』
そう言いつつも、
まだ都が飛鳥にあったころの、都人の姿。
藤原氏に滅ぼされた一族の無念が凝縮してかたちになった
「そんなわけで、売っちゃったものはしかたないにしても、 伊勢の神の神罰が退けられるなら、回収しに行こうと思って。
どうかな?」
『……試してみる価値はあるんじゃないか。
なにせ、前例がないから、結果はどうなるか知らないが』
「そりゃそうよね」
『我々のひふみの詞は、
だから、みずからの力を強めることで、神罰をはねかえすことはできるかもしれんな。
理屈では、どうにかなりそうだ』
「うん」
「やってみる」
『どうやって回収する?』
「決まっているじゃない」
そうすると、髪は肩のあたりの長さまでになった。
結い上げてしまえば、完全に少年だ。
「夜盗をするのよ」
そして、 宮の袿を懸命に引っ張る。
「おやめください、宮さま!
かりにも、
「位なんて、おなかの足しにもならないわ」
「さっさと女に戻る。
そして、おまえの言うとおり結婚しないと、みな日干しになる。
そうでしょう?」
「そ、それはそうですが」
だからといって、宮中にいるのは辛い。
添え伏になるのも、遠慮したい。
そうなると、自力で婿を捕まえて、通ってもらうしかない。
添え伏はいやだというのは、わたしのわがままだもの。
わたしが、なんとかしなくちゃ。
「
「お前と同じだ、力が働いていないときに、わかるはずもない。
ただ、 近くにいけば存在を感じるだろうし怪異も寄りやすくなっている可能性があるから、場所はわかりやすかろう』
「それもそうね」
「じゃあ、都に出て、あやしそうな場所を探しましょう」
かもじを結わえていた紐で、今度は自分の髪をくくりあげながら、
「
馬なら、都まで出るのもそんなにたいへんじゃないしね」
『おまえ、本当に女か』
「そうよ」
呆れ顔の
『その勢いで婿とりしたなら、すぐに誰か引っかけられそうだな』
「生活のためですもの」
おなかの足しにならないものなど、
そんなものを欲しがる余裕など、人生で一度もあったことはなかった。
食いぶちを確保したあとに、他のことはみんな考えればいいのよ。
だてに、貧乏育ちではない。
「さあ、行くわよ。ごはんのために!
『いやと言っても、連れていくだろうが……』
『しかし、わかっておると思うが、
都は、何重にも結界が張られておる。
相手が悪いと危険な目に遭わせてしまうかもしれん」
「大丈夫、 任せて。
わたし、逃げ足は速いの」
『そんなことで、平らな胸を張らんでもいい』
「……失礼な剣ねっ」
しかし、失礼ではあっても、役に立つ。
いつだって
どうにかしなくちゃ。
……してやろうじゃない。
方法は誉められたものではないかもしれないが、お上品に手段を選んではいられない。
とにかく、まともな姫宮としての生活に戻ってやる。
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