数千年のカレンダー

はむひこ

うたたね

 遥か昔。人類は、地球の外に新天地を求めて旅立った。

 宇宙船には多数のロボットも乗り込み、その操縦や新惑星の探索、巨大な船内の様々な設備の管理を行った。人類はと言うと、予定通り住み良い星が見つかるまでの間、全員が長い長いコールドスリープへと入ることになった。

 地球に存在したロボットには、当然宇宙船に必要のないものも無数に存在したが、後は野となれ山となれと、そのまま地球に残されることとなった。


 あれから数千年が経った今、なんと宇宙船は地球へ帰ってきた。どれだけ宇宙を飛び回っても、人類に適した移住先が見つからなかったのだ。

 船が地球へと着陸する。ロボットは次々と人類をコールドスリープから目覚めさせた。

 ぞろぞろと船から出てくる人々。彼らが地上に降り立ち第一感じたのは、地球への帰還の落胆らくたんでも安堵あんどでもなかった。目にした光景は、誰をも驚愕きょうがくと困惑に包んだ。それはある意味、恐怖ですらあった。


 地球を離れて数千年は経っていたのだ。

 数千年……ところがそこには、あの日と何一つ変わらない世界が広がっていた。地球に残ったロボットたちは正確無比せいかくむひに行動し、あの日のままの世界を維持し続けていたのだった。

 コールドスリープにより、数千年が一瞬の出来事だった人類に、時の経過など実感がない。そして目の前には、出発したあの日のままの地球。

 まるで全人類でうたたねでもしていて、本当は数千年の宇宙の旅などなかったのではないかと思うような光景だったが、ロボットが作り続けた可愛らしい卓上カレンダーの日付は、確かにあの頃から数千年が経過していた。

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数千年のカレンダー はむひこ @hamunohito

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