第7話
しばらく歩いたところで、突然金属音が聞こえてきた。
金属音だけだったら、現代日本で育った一般人の俺じゃ何が起こっているかなんて全く分からなかっただろうけど、吸血鬼になった今の俺なら、この音の方向で何が起こっているのかなんて簡単に理解できた。
だって、金属音が聞こえてくると同時に、俺の鼻にさっきと同じ食欲をそそるいい匂いが流れ込んできたんだから。
人間種ってやつが、血を流している。
つまり、戦闘が起こっていると考えて間違いは無いだろう。
問題はそれが分かったところでどうするか、って話だ。
翼を仕舞ったとはいえ、俺が人外に見えない保証なんて無いもんな。
「んー」
一旦、こっそり近づいて、遠くから様子を見てみるか。
それで、俺でも勝てそうなくらいに弱そうな奴、もしくは俺でも勝てそうなくらいに弱っていそうだったら、俺がどう見えるかを試すためにも姿を現してみよう。
もしも人外に見えるのなら、殺す。
見えないのなら……どうしような。
街にでも連れていってもらうか? ……いや、いくらなんでも、街は流石に危ないか?
音の方にいる奴から人外に見られなくたって、単純にそいつに知識が無いだけの可能性だってあるもんな。
そんなことを考えつつ、別に人助けをしようと思って音の方向に向かってる訳じゃないんだから、急ぐことも無く歩いていると、とうとう見えてきた。
5人くらいの男が10人くらい……えーっと、正確に数えると、8人か? まぁ、それくらいの人間と豚や牛? を守るようにして戦っている様子がそこにはあった。
んー、まぁ、当然っちゃ当然なんだろうけど、やっぱり押されてるのは豚や牛を守ってる側で、人数が少ない方だな。
どうしようかな。
多分だけど、今なら俺はあいつら全員を殺せると思うんだよ。
だって、あいつらの足元に流れているいい匂いを垂れ流している血を俺は操作できるだろうし、今操作すれば、完全に不意打ちになるだろう。絶対に殺せる自信がある。
見てる限り、あいつらはお互いそんなに強そうには見てないしな。
とはいえ、どうしたものかな。
姿を現して、俺がどう見えるのかも知っておきたいしな。
……よし。あの人数が少ない方……豚や牛を守っている方に一旦味方するか。
俺が人外に見えるのなら、殺す。
見えないのなら……まぁ、まだ行く気は無いけど、街の場所でも教えてもらおうかな。
理想は街じゃなく、村とかの場所を教えてもらうことだ。
人間がそこそこいる場所だと思うし、街よりは危険度も下がるだろうと予想できるからな。
……あくまで予想だし、全然そんなこともないかもだけど、結局、ビビってばかりじゃ何の意味もないし、それでいこう。
「大丈夫ですか!? 加勢はいりますか!?」
そして、俺はビックリしたような声を出して、そう言った。
当然、俺に視線が集まる。……その場の全員からの視線だ。
……どうだ? 俺はどう見える? 人外に見えるのか?
直ぐに男達の足元にある血液を操作できるように意識しつつ、随分と長く感じる時間の中、俺は返答を待った。
「助けてくれ!」
その結果、聞こえてきたのは突然吸血鬼が現れた恐怖による絶叫ではなく、救援を要請する言葉だった。
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