ゼツボー

海を泳ぐのが怖かった。

水泳を習っていたし、県大会にも出たことがあるくらいには得意だった。


底の見えない黒よりも暗い青は、宇宙を想像させた。

どちらも空気も重力もない、未知の世界。

おそらく、宇宙と海が逆転しても、何ら問題はないのだ。


僕は、海が怖かった。

沖縄の海に入ったことがある。下を向くと、さっきまで見えていた地面が見えなくなり、大きな怪獣の口に飲み込まれたように、自分の足も腰も見えなくなった。


怪獣は海にいるらしかった。


ということは宇宙にもいるらしいのだ。


僕は宇宙は怖くなかった。

いつだって大きな口を開けているというのに。


モンゴルの話を思い出した。宇宙はゲルのようなものだと考えられており、星は天井に穴が開いて、そこから神様が覗いていると。


そしたら流れ星はズボンのチャックみたいなものかなと、思った。



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