第7話



結局、あたしとモナは後日別の植物を観察するという事になった。モナにいたっては、課外活動内に魔法を使用したのが先生にバレて宿題を増やされる始末。

理由は一切入りませんとの事だった。


「納得いかねー」

「仕方ないわよ」

「お前が言うかっ!」


就寝前の時間。いつもの部屋に足を運べば、ふかふかなベッドに腰掛けるレンが昼間のウサギまがいを抱き締めていた。

前足に包帯が巻かれているから手当てもしてあげたみたい。


こうして改めて見ると絵になってるわね。

この子、さっきまでびしょ濡れで震えていたのに、レンが気に入ったのかしら。


「可愛いわね」

「お前、さっきと言ってること違くね?」

「少し弱ってるね」


レンがウサギ(まがい略)の白い毛並みを櫛でとかすように優しい手で背中を撫でる。


「この子、見付かったら破棄されちゃうだろうね」

「そう」


昼間に言っていたモナの言葉は事実らしい。本当に遺伝子組み換えの実験が行われていたのだろうか。


「見た目だけ少し変えとかないとね」


そう言ってレンが、ウサギを自身の膝に乗せて魔法をかけていく。

柔らかい光に包まれていくその生き物が、一気に白い毛が伸びてふわふわのヌイグルミみたいになった。


「これで、額の瞳も隠せるし耳も誤魔化せる」

「おお」

「後で、寮長にお願いしてみるよ」


モナの言葉に続いて、レンがもの柔らかに口を緩めた。


「お願いって、何をお願いするのかしら?」

「この部屋で飼ってもいいかって。きっと大丈夫」


レンがあまりにも大切そうにウサギの耳を撫でるから、ちょっとムッとしてしまう。

ウサギの頭に手を伸ばせば、ふわふわな毛並みで驚いた。と同時に、この子があの植物に溶かされていたらと考えるとゾッとした。


そう、あの時。モナが助けなかったらこの子は今頃、ウズラカツラの餌食になっていただろう。それは仕方の無いことなのだけど。



「……モナ」


「なんだよ」


「…………今日はありがとう」


「……!?」


素直にお礼を言っただけなのに、モナがこの世のものとは思えないものを見る目をする。



「失礼だわ」


「あはは、仲良しになったんだね」


「仲良しじゃないわ」


レンがあたしとモナに、にこにこと笑顔を向けるから急に恥ずかしくなって眉を潜めて小さく呟いた。


それにしても今日は色々な事があって、疲れたわ。瞼がおもくなってくる。

レンに勢いよく抱き付けば、うさぎが手並みを逆立てて逃げていくのが見えた。


モナに抱き抱えられた時、汗臭かったし、力強くて乱暴で、全然落ち着かなかった。

でもちょっとだけやさ……やっぱり違うわ。気のせいね。


あたしはまだ変わらない柔らかい世界に守られていたいから、優しい腕の中でゆっくりと目を閉じた。



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