王様の事情

「マジか!?」


男の正体に対し、そう叫ぶ俺。

それはメロウ達も同じだったのか.......俺と同じく驚いたような顔になっていた。

まぁ、剣の不法投棄犯の正体が王様なら仕方ないよな。


「でも、その王様が何でここに?」


メロウがそんな疑問を呟くと....カリバーは彼女の問いに対してこう答えた。


「私は戦いに負けた。ただそれだけだ」


戦い.....てことは


「内戦的なやつか?」


俺がそう言うと、コクリと頷くカリバーさん。

やっぱり、内輪揉めでこうなったってことか。


「私は....息子のことをちゃんと見ていなかった。その結果がこれだ。だからこそ、私は愚かな王だ」


息も絶え絶えな様子でそう言うと、俯く騎士達。

おいおい、このオッサンもしかして瀕死の重症なのか?

だとしたら....尚更放っておけないな。


「オッサン、あんまり喋ると傷が開くぞ」


俺はそう言った後、カリバーさんに近づくと....泡のようなものを放った。

その泡はカリバーさんにぶつかって弾けたかと思えば....カリバーさんはビックリとした表情でこう言った。


「こ、れは....!?」

「これで喋りやすくなっただろ」


驚くカリバーさんに対してそう言う俺。

一方、傷が回復した様子のカリバーさんの様子を見た騎士達は主人が回復したのが嬉しかったのか....涙を流していた。

おいおい、そこまで泣くか?


「で、これからどうするんだ?」


俺がそう訪ねると、カリバーさんと騎士は顔を見合わせた後.......こう言った。


「戦いに敗れた私がこの地に留まる権利はない。だが....願うことなら、生まれ育ったこの国で死にたい」


この人....ガチで覚悟を決めてるな。

多分、彼の言う死はこの国で討ち死にすることも含んでいるんだろうけど....けど


「死ぬ前提じゃなくて何を目的に生きることを考えたほうがいいんじゃね?」


何で死ぬ前提で話すんだ?

と思いながらそう言うと.....カリバーは目を見開いたかと思えば


「.......そうか。そうだな」


と呟いた。

それを聞いた騎士達は王に対して跪いた後、こう言った。


「王よ、我はどこまでもついて行きます」


....カリバーさんって本当に信頼されているんだな。


「皆、すまないな」


カリバーさんはそう言った後、立ち上がると


「私は.......この地でのんびり暮らそうと思うが、それでもついて来てくれるか?」


騎士達に向けてそう言った。

その言葉を聞いた騎士達はコクリと頷くと、カリバーさんはフッと微笑んだ。

....こんなに良い人が何で内戦に巻き込まれるんだ?


「あ、言っておくがここで暮らすのに俺の許可はいらないぞ?」


俺がそう言うと、ですよねという顔になるカリバー達。


「人間達も受け入れるなんて.......流石はウパ様です!!」


俺の言葉に対し、キラキラとした目でそう言うメロウ。

そんなわけで、俺達の仲間にカリバー達が加わるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る