エフ・イー!

3.14

転生…?

俺はただ毎日を平凡に暮らしていた。とくに良い大学にも行けずデカい会社にも入れず一般的、ただそこそこの人生を歩んでいた。

が、その歩みすらもできなくなってしまった。


『キィィィィイイー!!』


目の前に車が飛び込んできて。


俺はその瞬間後悔をしていた。いや車に轢かれたことに後悔しているのではない。

生きてるときにただ特に目立ったこともせず、日の当たる所より日陰のゆったりできる場所に留まっていたことだ。

車通りが多く、犬や猫もいるそんな道端に咲く花、雑草。それと人の庭の裏や倉庫裏、軒下に生えるコケ。

後者、外敵の少ないそんな場所に僕は居た。一生懸命何かに打ち込んだりもせず。

努力も継続的に行わなかった…。

そうやり続けていなかった。何もかもが中途半端…発展途上でやめていたんだった…。

あぁ…もったいねぇ…もったいねぇ…次は努力をするんだ……。


そんな言葉を胸に、俺は謎の大きな大きな車輪に吸い込まれるように…眠っていった…。









「んぎゃーおぎゃーー…んぎゃーー…」


だれか…誰か赤ちゃんが泣き叫ぶ声がする…。

ん…?…。

え、これ泣き叫んでるの俺…?!


「おぎゃーおぎゃー…?」


おい、これしか喋れねーぞ!!


「おぎゃあ……(泣)」


「あらあら…泣いてどうしたの…?」

にこやかに笑う母…なぜ母と分かるのかは分からない。ただ本能がそう感じた…。


また少し時間がたった。


気づくと俺は床で四つん這いのはいはいをしていた。地面は絨毯で高そうだ…お金もちの家なのか…すると優しい声が聞こえてきた…。

遠くの方にお母さんとお父さんがいた。


「可愛いなぁ息子は…」


母がこういった。

「ほーら…こっちへおいで〜!」


「ばぶばぶ…」

って…俺は何をっっ…!!




そしてまた時間は流れるように駆け巡っていった。


ん…ここはどこだ…俺は走っている…。

眩しい…外か…?!太陽が空の上で光っている。

家の庭か…?柵が見える。ん…横にはお母さんとお父さんが居るぞ…。


って…足に石が…


『ぐわぁん』


視界が大きく下に振り向いた。


っいってぇ〜〜…いだだだ………!!


目から涙が止まんないよ…ん…すると誰かが走ってきて…。


「大丈夫…?」


お母さん…ん?

誰だこの女の子は…。

多分幼稚園くらいか…?!僕もだけど。


「ほら…もう立って…」


なんだか可愛い女の子だな…。

そうだ、名前はアリスだ…。



て、あれもう行くの…?!


ぐにゃぁあ…。


またさらに目の前の景色が流れていった…。



「はっ…?!?!」


静かな部屋、ベッドから1人の少年が跳ね起きた。


「も、もう朝か…懐かしい夢を見たな…」


そう、俺はもともとは車に轢かれて死んだんだ。

そうして何故だか分からないがこの世界に転生…?したんだ。

小さい頃からこの家、いやかなり豪邸なこの家に生まれ、住んできた。

ここの時代はおそらくだが雰囲気からして中世のような感じがする。外は馬車が走りまるで昔大学生の頃読んだ転生したら〇〇だった、みたいな舞台。まさか自分がそうなるとは…

父は鉄関係の仕事をしているらしく家の近くにも工場こうばがある。

そしてそれはかなり上手く行っており平日はよく仕事で馬車にのって各地を転々としている。そのときのお土産がいつも楽しみだ。

そして俺の名前はユキだ。

ベッドから降り窓から下を見下ろした。

家の外にはレンガづくりの家に整備されたタイル。

多くの人が行き交う町なか。


それにしても…

見にくいな…

この窓…高い!!

俺が今、背伸びをしてやっと見える高さだ。

横にあった姿鏡にふと自分の体が映る。

まだ小学生…くらいだろうか…。

まだめっちゃ子供だ。

この家はさっきも言ったように鉄の仕事でかなりお金もちなのだ。メイドさんもよく廊下を行き来している。

綺麗な模様が施された絨毯、廊下には長い赤のカーペット。

そして…


「魔法が…この世界にはある!!」


小さい頃から料理するときに火を出したり、水を浮かせたり、そんな人をよく見てきた。俺もその魔法がやりたいのだがどうやらこの世界、いやこの国なのか、子供は危険だからやらせて貰えない。そして実際きっと危険だろう…。

だがそれも11歳になると学校へ行き魔法を教えて貰えるんだとか。

そう、俺は11歳、今日から学校へ行くのだ!!


魔法と物質が交わる世界。

そこには俺は転生した。









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