続々駄文日記

どうだっていいや

第1話

 図書館はヒマな中高年無業者が、無料で文化にふれることが出来る素晴らしい施設である。会社勤めしていたころは、盆と正月にすることがなく利用するのが関の山だったのだが今では毎週のように通っている。

 ただこのところ本を読むペースがとんと遅くなり、しばしば貸出期限を過ぎてしまう。新作本などは待ってる人が多いから気を付けてはいるが、職員からすれば大してかわりはしないであろう。

 昨日返しそびれた本は、俺が高校生だった昭和末期に出版された世界的ベストセラーである。当時はエンタメ小説ぐらいしか読んでいなかったので、興味も関心もわかなかったのであろう。おかげで数十年経った今でも新鮮な気分で読めことが出来るのだが、同時に脳みその衰えも実感することになってしまった。

 聖書アラビア起源説というタイトルにひかれ手に取ったのだが、中々読み進めない。そもそも異教徒かつ不信心な俺は、聖書など1ページも読んだことはなくアラビア半島の地理もちんぷんかんぷんな無教養者である。(聖書を記したヘブライ語は紀元前5~6世紀ごろには使われなくなっており、1000年ぐらいの時を経て当時の学者が再構築したというのだから驚きである。)それでも本書の内容が非常に大胆で人によっては受け入れがたいことぐらいは理解できる。

 幼少のころ日ユ同祖論なるものを耳にしたことがある。国が滅び新天地を求め放浪した民族が、何千キロも離れた日本列島にたどり着いたという壮大な浪漫説である。

(つい先日もそれをベースにした蘊蓄小説を楽しく読んだのだが)

 しかし本書は具体的かつ理性的に考証をすすめており、論理の飛躍や誇張等は見当たらない。むしろ従来の聖書の解釈では謎や矛盾が生じる箇所も素直に読めるようになるから、消えた~氏族や失われた~等といったエンタメ的な要素が生まれる隙間が消えてしまうのである。

 俺のようなひねくれ者は、聖書というとユダヤ教徒やキリスト教徒が後生大事にかかげる経典であって見る価値なぞ1円もないと思っていた。しかし本書は解釈を変更するだけでその地域の地理や歴史を記録した文化遺産になるのだと認識を改めさせてくれた。


 


 


 

 

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