教室の隣の席。
小さな声で挨拶してくれた、前髪の長いあの子。
話しかけるたび、ちょっとずつ返事が増えて、ちょっとずつ顔を見せてくれて。
ある日髪を切って、ある日マニキュアを塗ってきて、いつの間にか「また明日」と友達に手を振るようになった。
この物語は、特別な出来事が起こるわけじゃない。
でも、静かだった彼女の中で、確かに何かが変わっていく。
言葉が増えて、視線が交わって、笑顔が咲く――それだけのことで、毎日はこんなにも愛おしくなる。
誰にも気づかれないほど、ささやかで、だけど確かな変化。
これは、誰かを好きになる前の『最初の気持ち』を描いた、小さな小さな青春のはじまり。