第3話
事件は世間に知れ渡り、新聞やニュースでも大々的に取り上げられ、仁志田さんは過去最悪の連続放火犯になっていた。私もラーメン屋の味を知って生きる希望が湧かなければ同じ道を辿っていたのだろう。
好きになった人と共に。
愛していた。
私に細かい指示を出しては喜んで。
私が挨拶をすると微笑んで。
4階建てのモルタル造りの会社に入ると、その足でオフィスへ向かう。
エレベーター内で出くわした同僚の一人は私を見て不審な顔をしていた。
狭いオフィスに入ると、みんなが立ち上がった。
「なんだ? 忘れ物か?」
上司の江藤部長が訝しんだ。
同僚たちも皆、一斉に不審感を表した。
「ええ、どうか辞表を受け取ってください。私はそれだけで十分です」
「……辞表? どうやら、生きる希望を持ったんだね」
「ええ……これから社会で精一杯生きていきます」
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