第12話
そこからは特に会話も無くフラペチーノのを啜り終え店を出た。
二人して共通の目的地である駅を目指し歩く。
私は、土地に明るくないので長南さんに案内してもらった。
「そういえば私と委員長が知り合いってなんで分かったの?」
迷いなく歩く彼女に隣から問いかける。
確かに目が合ったりはしていたがそれだけで断定できるものかと不思議だった。
「クラス表の前で『同じクラスかー』って呟いてたからそれで……」
「……あの独り言聞かれてたのか恥ずかし」
「まぁ私以外はたぶん聞こえなかったと思うよ。あの時隣に居たの気づかなかった?」
全く気づきませんでした。
思い返してみてもクラス表を睨みつけていた事しか覚えていない。
そういえばあの時私は有栖のことで頭いっぱいになっていたのだ。
「ごめん、ぜんぜん覚えてない」
「いいよ別に。特別音無さん目立つから」
「私ってそんなに目立ってた?」
「うん、背高いし金髪だしちょうど後ろの席なのも直ぐに気づいたよ」
「なんかちょっと恥ずいな」
「それに話してみると普通にいい人だった」
「やめて長南さんにそういうこと言われるのニヤけるから」
そう言うと長南さんは私を覗き込もうとする。
それを私は体を回転することにより回避し長南さんが追う。
その攻防はいくらか続いた。
「別にホームまで見送らなくていいのに。長南さん反対側でしょ」
「今日は付き合ってもらったからね。それぐらいはさせてよ」
しばらく雑談をしていると、キキィという音ともに電車電車が到着しドアが開いた。
「じゃまた」
「うん学校で」
いつもよりも少し勢いをつけて電車に乗り込む。
「私も長南さんがいい人で良かった」
発射の直前振り向きざまに告げる。
さっき照れさせられた仕返しのつもりだ。
予想通り彼女ははにかんだ笑顔を浮かべてくれた。
ポケットの中のスマホが震える。
見るとさっき撮ったツーショット写真が送られてきていた。
締まりなく笑う私とバシッとウインクを決めている長南さん。
どうにもアンバランスな写真だがそういうのも青春みたいでいいかもしれないと思う。
久しぶりに空欄のない一日が過ごせたように感じた。
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